「住宅政策」が社会保障として重要なことが分かる映画『東京難民』写真はイメージです Photo:PIXTA

古今東西の映画を通じて、社会保障制度の根底にある考え方や、課題などを論じていく連載「映画を見れば社会保障が丸わかり!」。第21回は、一見すると社会保障制度と無関係に映るかもしれませんが、暮らしに非常に密接に関係している住宅政策を取り上げます。(ニッセイ基礎研究所准主任研究員 三原 岳)

『東京難民』ジャケット写真『東京難民』©2014『東京難民』製作委員会/発売元・販売元キングレコード/Blu-ray¥5,800+税・DVD ¥4,800+税

 住宅と聞くと、「社会保障なのか?」という印象を持たれるかもしれません。多くの社会保障政策が厚生労働省の担当であるのに対し、住宅政策は国土交通省が所管していますし、国内外の福祉国家研究でも住宅政策は対象外でした。

 ただ、住まいが決まらなければ生活は不安定になるので、住宅政策は社会保障の1つと理解できます。この点を考える素材として、2014年公開の『東京難民』を取り上げましょう。

住まいを失ったことで
生活が不安定化に

 主人公は、「多摩国際大学」という大学に通う21歳の大学生、時枝修(中村蒼)。親からの仕送りを受けつつ、何となくダラダラと学生生活を送っていました。

 ところがある日、授業に参加するため、教室前の学生証を読み取る機械に学生証をかざしたところ、読み取りエラーが出てしまいます。そこで大学の事務局を訪ねると、そこで衝撃的な言葉を聞かされます。学生証が無効になっていること、前期の学費が未納で大学を除籍になっているというのです。