寅さんシリーズでも
持ち家に対する憧れの念

 その場面は「寅さんシリーズ」の第26作、1980年製作の『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』にあります。

 シリーズ全体の説明は余り要らないと思いますが、「フーテンの寅さん」こと車寅次郎(渥美清)を中心に人情味と旅情あふれるストーリーが展開されるほか、「マドンナ」と呼ばれる女優に寅さんが失恋する話が登場します。

 第26作では、寅さんが実家の団子屋「とらや」の敷居をまたぐと、妹の諏訪さくら(倍賞千恵子)からマイホームを建てたことを知らされます。実際には、とらやを経営する叔父の竜造(下條正巳)から資金援助を受けていたのですが、それでも寅さんは以下のように述べます。

「うち持ったのか、お前たち。(略)2階建て?ほおそら大したもんだ。いや俺もね、心配してたの、いつまでこいつらがあの潜水艦みたいなアパートに住んでんのかなと思って」

 同じような話は2001年に三谷幸喜監督が製作した『みんなのいえ』でも登場します。具体的には、家を新築しようとするシナリオライターの飯島直介(田中直樹)と妻の民子(八木亜希子)に対し、父・長一郎(田中邦衛)の大工仲間が「その歳で家建てるなんて、こりゃ大したもんだ」と声を掛ける場面です。これは「住宅すごろく」を早くあがった夫妻に対する称賛の言葉と受け止められます。

 こうした場面やセリフは、日本人の持ち家に対する憧れの念を反映しているのかもしれません。

 会社による社宅整備については、1953年製作の『東京マダムと大阪夫人』という映画があります。ここでは会社が整備した「あひるカ丘」の戸建て社宅に住む一家を主人公にしつつ、 伊東家の夫妻(三橋達也、月岡夢路)を中心に、近所に住む会社の同僚たちとのドタバタを描いており、住宅政策における社宅の地位を見て取れます。

 しかし、こうした住宅政策には漏れが生じます。『東京難民』『ホームレス中学生』のように家を失い、「ネットカフェ難民」「ホームレス」となった人たちだけでなく、持ち家を建てるだけの所得を持てなかった人、あるいは会社を退職したり、所得が減ったりした高齢者です。言い換えると、年齢や所得、仕事などの理由で「住宅すごろく」にうまく乗れなかった人です。