こうした企業は、「うちは副業OKですよ」とアピールして少しでも採用を有利にしようとしているのだ。つまり、「副業OK」をうたう企業の全てが、必ずしも社員の副業に前向きというわけではない。

 副業解禁といいながら、フタを開けてみれば副業を認める企業は3割にも満たず、スキルシェアサービスの市場は伸び悩む。今年に入り、メルカリやランサーズ、クラウドワークスなど大手が相次いで撤退し、残っているのはココナラやストアカといったスキルシェア専業サービスのみとなった。

伸び悩むスキルシェアサービスに
参入するベネフィット・ワンの狙い

 そんな中、スキルシェアサービスを強化しようという企業もある。福利厚生代行サービス最大手のベネフィット・ワンだ。同社は昨年7月から、会員企業の社員向けに、CtoCのシェアリングアプリ「Worker’s Market」を提供している。

 このアプリを利用すれば、同社の福利厚生代行サービスを利用している会員(約475万人)の間で、モノやスキルをシェアできる。利用者は、モノやスキルをアプリの掲示板に投稿したり検索したりする際に、「社内限定」という設定も選ぶことができるため、社内コミュニケーションの活性化にもつながる。実はこの機能が、企業にとっては非常に都合がいいのである。

 先述したように、副業を容認する企業の全てが社員の副業に前向きなわけではない。社員が外部で副業すると、労務管理が難しくなるからだ。その点、社員同士でスキルシェアなどの副業をしてくれれば、匿名で使えるとはいってもある程度誰がどこでどんな副業をどのくらいやっているのか目が行き届く。

 同社サービス開発部の石田耕太郎新規事業推進グループ長は、「社内の福利厚生として、あくまでもコミュニケーションツールを目指す」と、サービスの狙いを語るが、企業側はコミュニケーションの活性化だけでなく、社員の副業を管理するための手段としても注目しているようだ。明らかに、政府の副業解禁の狙いとはずれている。

 しかし、複業(複数の本業を持つこと)研究家の西村創一朗氏は「副業のタネは社内にあることが多いため、筋のいいサービスだ」と話す。副業というと、ともすれば土日勤務の外食店でのバイトなどを選んでしまい、全くスキルアップにつながらないケースも少なくない。むしろ、社内で自分の特技を教えたり、勉強会を開いたりすることが、「自分に何ができるのか」を考えることが、本業の役にも立つというわけだ。

 そもそも副業の解禁は、個人の多様な働き方を実現するためのものであり、副業まで会社が管理しようというのは趣旨に逆行している。

 しかし、そんな企業側の論理をよそに、「世界中で個人の『信用』が重視されるようになってきている。将来的には、企業の看板より、信用が積み上がった個人の方が選ばれていくだろう」(野口氏)。そんな時代の到来に備えて、個人は会社に勤め続けるか否かにかかわらず、利用できるものは利用しつつ、信用を積み上げておくのが賢明なのかもしれない。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相馬留美)