今、顧客減、会員減に悩んでいる企業は多い。中でも定額課金=サブスクリプションモデルで利益を上げている場合には、会員取得ばかりに目を向けて、離れてしまう顧客には、なかなか有効な手を打てない現状だ。
元WOWOWグループ初の女性取締役であり、顧客を引き留める「リテンションマーケティング」で実績を上げた大坂祐希枝氏が初の著書である『売上の8割を占める 優良顧客を逃さない方法 利益を伸ばすリテンションマーケティング入門』を発売。
この連載では、この著書から一部抜粋してご紹介する。
時代劇が好きな60代の男性に、
洋画を勧めて評価される
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前々回まで解約リテンションを、解約しやすさをもとに62のグループに分けた「顧客データベース」と、顧客が番組を視聴した時に味わう「気持ち」を軸に構築した「番組データベース」を使用して行うことになった経緯をお話ししました。
そして、前回では、そういったやり方が功を奏し、「WOWOWの神対応」とつぶやかれ、ツイッターで拡散した例をご紹介しました。
さらに、「お勧め番組提案」の成功例の中に、人の「気持ち」がエンターテインメントのジャンルを超えることを示すわかりやすい例があったので、ご紹介しましょう。
ある日60代男性から解約申し込みがありました。加入動機番組は『赤穂浪士』となっていました。
映画『赤穂浪士』は東映の時代劇。60代男性で加入動機が『赤穂浪士』なら、常識的なリテンションでは邦画の時代劇を勧めます。
コミュニケーターは『赤穂浪士』とシステムに打ち込みましたが、時代劇は放送が予定されていなかったので表示されませんでした。
コミュニケーターは20代の女性で、60代男性の好みは想像がつかなかったので、リコメンドシステムの指示に沿って「どんな気分や雰囲気の番組がお好きですか」と聞きました。
男性が「男気溢れるやつが好き」と答えたので「男気溢れる」とシステムに打ち込むと映画『ロッキー』シリーズ一挙放送が表示されました。
それを受けてコミュニケーターが「男気溢れる感じがお好きでしたら来月、ロッキーが放送されますがご覧になりませんか?」と案内すると、60代男性はなんと「いいね!スカッとしそうだ」と答え、リテンションが成功したのです。
実際にはこれほど単純なやりとりではありませんでしたが、常識にとらわれずに顧客の「気分」や「気持ち」から導き出した結果、予想外のところに顧客にヒットする番組があることがわかった例です。
リテンションカルテやリコメンドシステムを使って解約リテンションを行うことで、リテンションに要する対話の時間は減少しました。グループごとの顧客の特徴に合わせ、顧客が反応しやすい順に「対応」を提案している結果です。