「気持ち」に寄り添う
マーケティング

リテンションに要する対話時間は減少した一方で、同じ応対時間の中での顧客とのコミュニケーションは深くなりました。

これも62のグループごとの顧客の特徴に合わせた提案を行っているからです。自分の事情や、興味があることに合わせて話題を提供されると人は思わず話にのってしまうものです。

前ページの「赤穂浪士」で加入した人のリテンションが「ロッキー」シリーズ一挙放送で成功した例は、オペレーターが思い込みを持たずにリコメンドシステムを素直に使用したことが成功につながりました。

結果的に60代男性は、オペレーターに「ロッキー」における男気について気持ちよく語ってくれたそうです。「君は若いのによくわかってるね。話せてよかった」と言って電話が終わっていました。

解約を止められた人が、番組を見た時に味わう「気持ち」について気持ちよく語る。単純に解約が抑えられただけでなく、顧客が自社のサービス(番組)をきっかけに味わう快さを再確認する機会を作ったという点で、良くできた解約リテンションの例だったといえます。

人が介在するから高まる満足度

すべてのやり取りがコンピューターで完結する仕組みと、人が介在するやりとりの決定的な違いは、コミュニケーションが存在するかどうかだと私は考えています。

たとえばこの、解約を思いとどまった顧客が自分でリコメンドシステムに好みを入力し、システムが『ロッキー』と表示しても、同じような心地よさを感じたでしょうか。

残念ながら、そうはならなかっただろうと思います。人とのコミュニケーションを通して感じる驚きや喜びは、分析結果そのものに対してだけ感じているものではないのです。

その結果を導き出す過程や、結果を伝える際の、オペレーターの顧客に対する共感や配慮が伝わることによって、単純な結果とは別物のコミュニケーションになっているから、心地良く感じてもらえるのです。