今、顧客減、会員減に悩んでいる企業は多い。中でも定額課金=サブスクリプションモデルで利益を上げている場合には、会員取得ばかりに目を向けて、離れてしまう顧客には、なかなか有効な手を打てない現状だ。
元WOWOWグループ初の女性取締役であり、顧客を引き留める「リテンションマーケティング」で実績を上げた大坂祐希枝氏が初の著書である『売上の8割を占める 優良顧客を逃さない方法 利益を伸ばすリテンションマーケティング入門』を発売。
この連載では、この著書から一部抜粋してご紹介する。

「気持ち」を軸に番組データベースを構築する

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前回は、WOWOWでは番組データベースを構築する際に、カスタマーセンターのスーパーコミュニケーター、つまり解約リテンションのハイパフォーマーの頭の中にあるデータを、実際のデータに置き換えたという話をしました。

この作業を進めるうちに、顧客ニーズと番組を紐づけるポイントは顧客の「気持ち」にあることがチームの共通認識になりました。

嗜好や生活スタイルが異なるそれぞれの顧客が、心地よいと感じたり、心を揺さぶられたり、「もう一度見たい」と感じたりするエンターテインメントは違います。
人によって違う「気持ち」に応える提案をしないと、リテンション時に顧客の気持ちを動かすことはできません。

スーパーコミュニケーターの頭の中には、過去にリテンションに成功した際に、顧客の態度変容を促したポイントは何だったのか蓄積されていました。

番組データベースの構築にあたっては、コミュニケーターに蓄積されている顧客の態度変容のポイントを、気分、雰囲気、感覚、価値観といった項目に分けて落とし込んでいきました。

「楽しい」「ほっこり」「泣ける」「スカッとする」など、気持ちを軸に分類すると、映画、音楽、スポーツなどジャンルで番組を分けた時とは違い、常識的には繋がらない番組同士が同じ気持ちに結び付いていることがわかりました。

スーパーコミュニケーター6人で構成されるデータマネージメントチームに、データ構築専門会社のスタッフが聞き取り調査をし、番組やジャンルに、人の人のいろいろな気持ちがどのように紐づいているのかを紐づけてシステム化するという、気の遠くなるような作業が8カ月ほど続き、ようやく、番組データベースが立ち上がりました。

人がエンターテインメントに触れた時に味わう気持ちを軸に作られたWOWOWの番組データベースは「気持ちデータベース」と呼ばれています。