シニアの中途採用拡大に欠けている
「部局別採用」という視点

 今回、新たに登場したものが中途採用市場の拡大という政策目標である。この目標自体はともかく、なぜ企業が、特にシニア層で中途採用に消極的かという要因分析を欠いている。本来、「新卒一括採用か中途採用か」の対立軸よりも、「人事部採用か部局別採用か」の方が、はるかに重要である。未熟練の新卒採用者に比べて、特定分野での専門的能力をもつシニア層の採用は、そのキャリアを評価できる部局の責任者による採用がミスマッチを防ぐ上で必要となる。

 しかし、この場合、仮にそのキャリアを生かせる業務がなくなった場合に、雇用関係がどうなるかについて明確なルールはなく、紛争が生じやすい。これを防ぐためには、「職務・地域限定正社員」という新たな働き方のルールが必要だが、これに対して労働界の反対は根強く、法改正は先送りされている。

 新卒一括採用者が企業内で配置転換を繰り返し、どの部局でも通用するジェネラリストに育成されるという、過去の高い経済成長期に成立した雇用慣行は限界に近付いている。そうした働き方も少数のコア社員には必要かもしれないが、大多数の社員は特定の職種の専門職で、より良い条件の企業に中途採用されるような流動性の高い労働市場が必要となる。企業に対してキャリア採用を増やせというだけでなく、それを実現できるための法制度を整備することが政府の基本的な責任である。

「解雇の金銭補償ルール」の策定で
透明かつ公正な労働紛争は解決できる

「日本の解雇規制は厳し過ぎ、その緩和が必要」という誤解がある。現実には、労働基準法に定められている解雇規制は、特殊な場合を除き、30日分の賃金である解雇手当のみで、それさえ支払えば、事実上、解雇自由の世界である。

 また、労働契約法には、企業は解雇権を持つものの、それを濫用してはならないという「解雇権濫用法理」が示されている。しかし、この判例法の原則を単にコピーしただけの規定では裁判に訴えなければ解雇権濫用の有無が示されず、裁判の費用を賄えない労働者にとっての有効な救済手段となっていない。