「製品中心」から「顧客中心」へ

 大きな変化が起ころうとしている。今後5年から10年のうちに顧客を理解できなければ、その企業は立ち行かなくなる。小規模なスタートアップ企業が巨大企業の鼻を明かしているが、それができる理由は、彼らは誰に売っているのかを知っているという単純な理由による。

 誰もが80兆ドルの経済に手が届くところにいる。長寿企業は顧客に従う企業であり、顧客を従わせようとする企業ではない。顧客が何を欲しがっており、それをどんな方法で入手したがっているかを知る企業は、独りよがりの製品を作って、顧客に売りつけることに時間と労力を費やしている企業より、はるかに良好な成果を上げるだろう。

 製品中心から顧客中心へ──この組織的マインドセットの移行こそ、私がサブスクリプション・エコノミーと呼ぶものだ。今日の世界は、運輸、教育、メディア、医療、ネットデバイス、小売り、製造など、すべてが「サービスとして」提供されている。

 もちろん、サブスクリプション自体は新しい考えではない。サブスクリプションの最も基本的な定義は、文書に添えられた(sub script)書き込みである(名前、メモ、補遺など)。2つの当事者が関与する場合に書き込まれる合意内容、協定、関係などのことだ。

 ビジネスモデルとしては、ジャーナリスト、著者、絵師、歴史家、地図制作者は、何百年も前からサブスクリプション(購読料)という名の対価を受け取っている。1980年代によろしくない音楽CDを大量に販売したのもサブスクリプションだった。

急増するデジタル・サブスクリプション

 それでは、いま、なぜこのシフトが起こっているのか?サブスクリプションが人々に届けられる方法が変わったからである。今日のサブスクリプションはデジタルで届けられ、その過程で膨大な量のデータが生成されるからだ。