消費者の関心が「所有」から「利用」へと移行しつつあるなか、急成長をとげているのがサブスクリプション企業だ。音楽・動画配信などで日本でも知られるようになったこのモデルが、なぜ伸びているのか。最新刊『サブスクリプション』(ティエン・ツォ著)の本文から一部抜粋してお送りする。

急成長企業のビジネスモデルはここが違う

「顧客の時代」の新しいビジネスモデルとは?

 本書を読んで何か記憶してほしいことがあるとすれば、上の図を記憶してほしい。現在進行中のビジネスの変化を示す図だ。

 左側が古いモデルで、企業は「製品を市場に出す」こと、できるだけ多く売ることをめざしている。もっとたくさんのクルマ、ペン、カミソリ、ノートパソコンを販売しようとしている。そのために、できるだけ多くの販売チャネルや流通チャネルに製品を流そうとしている。

 もちろん、製品を買ってくれる顧客がいなければ話にならないのだが、売れてさえいればよくて、誰が買ってくれているのかは気にしていない。

 これは現代の企業の考え方ではない。今日、成功している企業は顧客から物事を発想する。彼らは、顧客が多くのチャネルで時間を使っていることを知っており、どのチャネルであれ、そこで顧客のニーズを満たす必要があることをわきまえている。

 顧客について多く知る企業ほど、顧客のニーズを満たすことができ、価値のある関係を顧客と結ぶことができる。これがデジタル・トランスフォーメーションだ。直線的なチャネルでの一方通行的な取引から、サブスクライバーと企業のあいだの循環的でダイナミックな関係への変化だ。