「何とか、手軽においしい和食を作ることができないか。若い人や忙しい人に、もっと食べてほしい」

 シャープIoT HE事業本部スモールアプライアンス事業部商品企画部主任の吉田麻里はそう考えた。

 開発の鍵となったのは、温度調節とまぜ技ユニットだった。温度の調整については、すでに発売している他の調理家電で培ったノウハウがあった。一方で、「かき混ぜる」というノウハウはゼロ。

 うまく混ぜなければ、ぐちゃぐちゃの肉じゃがや、焦げ付いたカレーなどができてしまうから、実現は必須だった。

 しかも、ホットクックは気軽に作ってほしいというコンセプトのために、食材の量が違ってもおいしくできることを目指した。決まった量を混ぜるだけでも大変なのに、食材の量を認識して混ぜ方を変えることが求められたのだ。

 吉田たちが編み出した解決法はこうだ。かき混ぜる際、食材に火が通っていない硬い状態なら、棒が食材に当たった際の反発も強い。そこで、そのような負荷を測るセンサーを搭載し、食材の量と火の通り具合を判断し、温度調節をしていく仕組みを開発した。

 ただし、それだけではダメ。同時に必要だったのは、膨大な量のデータだ。ある食材はどれくらいの温度でどれくらい火が通れば棒にどれほどの負荷がかかるのか。そのデータを集めるために、まずは肉じゃがから始め、数百種類の料理を試していった。

 2年ほど開発に費やし、15年、発売にこぎ着けた。現在では330通りのパターンを認識している。もちろん和食だけではなく、カレーやシチューなどもおいしくできる。ちなみに、発売から3年がたつが、混ぜるための棒を備えた電気鍋はホットクックだけだ。

 評判は上々だ。シャープによれば、ホットクックの購入者の8割が週2~3回は使用しているという。発売当初は最大4人向けの製品だけだったが、今では6人向けや、Wi-Fiによる通信機能を内蔵した機種もある。

 シャープは調理家電のみならず、全社を挙げて製品のIoT化を進めている。ホットクックへのWi-Fi搭載もその戦略の一環だ。