私はこの世界に40年くらいいますが、飛び込んだ動機は医療で世の中に貢献したいというものでした。青臭いですけど。したがって、まずそのために何かをする。その結果として会社として成り立っているというのが順番。世の中で医療なりヘルスケアなりがどう捉えられているかっていうと、社会の高齢化でニーズはどんどん増えるからビジネスチャンスがあるというもの。いっぱい参入してくるんですが、私に言わせれば逆。逆だと思うんですよね。

 繰り返しますが、儲かりそうだからやるのではなく、何かをやることが先。その結果として、儲ける。結果がついてこないとだめなのは当然ではありますが。

――大企業の中にあるヘルスケア部門は、他部門から「カルチャーが違う」って言われやすい。ヘルスケアのカルチャーになじむと、物の考え方もスパンも変わってくる。変わってしまう。そこで社内とのギャップが生じてしまうのでしょうか。

 株式会社ですし、投資家の期待に応える必要がある。でも、当然の努力を少なくできるような儲かるビジネスをやりましょうっていうのは、ヘルスケアに持ち込むべきではない。

――投資にリスクも時間もかかるヘルスケア部門は、一般の製造業の会社の中でフィットしないということですか。

 それはね、また違う。米国では非常に投資家の投資対象になっていますし。なぜかというと、ハイリスクハイリターンだから。10のうち3つが成功するかっていうとそうじゃないかもしれないけど、でも米国にはそうしたものに投資するという、社会的なバックグランドがありますよね。

 これも個人的な意見ですけど、一時期、「会社は誰のもの」っていう議論があったときにね、株主のものというのが結論であるなら、会社は成り立ちと進むべきビジョンをしっかりと持って、それを世の中に発信して、自らの会社に投資する株主はこういうプロファイルの人であるべきだっていうことを明確にするべきと思いました。そうすれば、会社のビジョンと株主の期待を合わせることができる。こういう努力を会社はしなければいけない。ヘルスケアの世界に長くいて、常々感じてきました。

――それを望むのであれば、キヤノンに買収されたけれども、そもそもいろいろな事業を持っている会社の中の一つとしてあるべきではないのかもしれないですよね。四半期単位の結果なんて求めませんというような人たちに投資してもらわないと成立しない。

 いや、それは別にヘルスケアに限らないんじゃないですか。目指すべきビジョンを株主にちゃんと理解して投資してもらうように場を作るなり、そうしたことが大切なんです。

たきぐち・としお/1980年東京大学工学部精密機械工学科卒業後、東京芝浦電気入社。 東芝メディカルシステムズマーケティング統括部長、営業本部副本部長、事業推進部長を経て13年常務、14年より社長