(1)時間稼ぎ作戦

 某国の政情不安で重要資源の調達ができない、適した工場用地が見つからない、基幹パーツの品質が安定しない、なんでもいい。社長がとりあえずは「仕方がない」と思うような理由をあれやこれやと並べ立ててとにかく実行しないのだ。

 私の知人はあるとき、ダウンサイジングが見込める技術革新がすぐそこまで来ているにもかかわらず、社長から高額な設備投資をするプロジェクトの主任を命じられた。彼はあの手この手でその設備投資ができない理由を上申し続けることによって、とにかく時間を稼いだ。

 そうこうしているうちに技術革新が公のものとなり、そのような高額な設備投資の必要がないことが自明となった。彼の粘りにより、その会社は何十億円もの損失を出さずに済んだ。もちろん彼が上からの意思決定どおりに行動していたら、(上からの決定に従っただけにもかかわらず)巨額な損失を出したことによる左遷は必至であり、その後の会社人生は生ける屍として過ごすほかなかったであろう。

(2)換骨奪胎作戦

 これは、新規プロジェクトや事業が生まれたもともとの話のなかで、意思決定者が強く固執しているところだけをピックアップして、表向きは意思決定を十分尊重したことにしながら、実質は別のものに変えてしまう作戦だ。

 例えば、とりあえずA社と合弁会社を作ることが大事なのであれば、事業をする会社を作るのではなく、共同購入のための会社であるとか、プランニングだけをやる会社にするとか、体面を保つ形だけは作って、お茶を濁す作戦である。
 
 あるいは社長が大々的な業務改革に着手するためBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)をして社内改革を進めようとしているとしよう。担当者としては、ビジネスそのものが大きく変わるのでBPRには向かない時期だとか、どう見てもお金がかかりすぎるなどと考えたなら、これを今話題のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入で代替し、名前は業務改革プロジェクトのままにして社長の意向に沿っているかのように見せながら、実質的には別のプロジェクトに変えてしまうといった方法である。