12月7日に発生した香港の高層マンション大火災11月26日に発生した香港の高層マンション大火災 Photo:VCG/gettyimages

世界を震撼させたあの高層マンション大火災からわずか10日後、香港では立法会選挙が強行された。被災者支援に集まった市民の輪は一夜で消え、民主派の最後の砦だった政党は31年の歴史に幕を下ろした。火災を人災だとして責任を追及しようとした大学生の逮捕、廃棄された追悼の花束。そして、78歳のメディア王に下った判決は……。激動の12月、香港で何が起きていたのかを紹介したい。(フリーランスライター ふるまいよしこ)

高層マンションの大火災からわずか10日後に選挙が行われた

 12月7日、香港で最高議決機関である立法会の4年に1回の議員選挙の投票が行われた。あの、世界中の目を引いた高層マンション団地の大火災からわずか10日後のことだった。さすがに延焼が続いていた2日間と、その後3日間は各陣営に選挙活動を控えるよう通達がなされたものの、香港市民の心を打ち砕いたあの激しい火災の直後に、政府は「選挙決行に支障はない」と判断し、予定通り投票を行うことを決めた。

 それは不思議な選挙戦だった。選挙活動の一時停止期間中には、団地内の8棟のうち7棟が火に包まれ、燃え続けた大火災を引き起こしたと考えられる要因や詳細が次第に明らかになった。

 そして、マンションで進められていた改修工事担当施工会社や監督会社の責任があぶり出され、関係者が逮捕された。その一方で、独立オンラインメディアが、このマンションでは実は施工前の入札段階で不正疑惑が巻き起こっていたと伝え、当時の報道情報を掘り起こした。当時、不満を持つ住民がその疑惑を政府の監督局に訴えたにもかかわらず、管理者組合が選んだ施工業者によって工事が強行され、各戸が300万円相当の「費用」を強制的に払わされ、このような大事故へとつながってしまったというタイムラインも暴露された。