派遣労働地獄※写真はイメージです(写真/getty images)

「名の知れた大手の派遣会社でさえ、手の届かない存在。正社員になるなんて、夢のまた夢ではないか」

 埼玉県に住む木村正則さん(仮名、35歳)は、正社員になることへのハードルの高さを感じている。

 都内で生まれ育った正則さんは、留年したことをきっかけに2年生で大学を中退。学生時代からアルバイトをしていたスーパーで配達のアルバイトを続けたが、2~3年もすると店が潰れてしまった。

 本格的に就職を考え、公的機関が運営する職業訓練学校に入って半年間、印刷の技術を学んだ。もともと大学では日本文学を専攻していたくらい本が好きだったため、本に関係する仕事に興味を持っていた。

 職業訓練校では「印刷ならつぶしが効く。どこかに就職できるだろう」助言されて、選り好みしなければ就職できるだろうと期待したが、訓練校を卒業するころには出版不況が著しくなり、就職先を紹介してもらえなかった。都内にある実家に住んでいたが、親からは「一人暮らしをして社会勉強しなさい」と発破をかけられ、家を出た。

 アルバイト時代の友人を頼り、埼玉県川越市に引っ越して友人とルームシェアして生活を始めた。それまで日雇い派遣の経験はあったが、初めて派遣会社で長期の仕事を紹介してもらった。書籍を扱う倉庫での仕事。勤務時間は10時から18時まで。3ヵ月おきの契約更新で、時給950円でのスタート。手に職をつけよう、スキルアップしようと、働きながらフォークリフトの免許を取った。すると時給が40円上がったが、現場では「初心者はフォークリフトに乗らせない」とはねつけられ、「これでは経験が積めない」と悩んだ。

 派遣会社は契約更新の手続きが杜撰で、契約書が送られてくることもなく、なし崩しで働き続け、1年以上が過ぎた。ある時、担当者に有給休暇はあるかと尋ねると「ない」とサラリと答える。