エアライン・鉄道の進路Photo by Yuito Tanaka

中東情勢の悪化に伴いジェット燃料価格が急騰し、航空業界に激震が走っている。最新データによれば、価格はわずか1カ月で倍増。さらに、原油価格との差額を示す「スプレッド」も過去に類を見ない水準まで高騰し、燃料費が経営を直撃している。ダイヤモンド編集部の独自試算では、国内航空大手で月間300億円のコスト増に達するという衝撃の結果が出た。もはや収益圧迫という次元を超え、安定運航そのものが危ぶまれる事態となっている。連載『エアライン・鉄道の進路』の本稿では、燃油高騰が突き付けるエアライン経営の過酷な現実に迫った。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)

1カ月で燃料価格は倍増、スプレッドは3.5倍に
異常事態が直撃する航空会社の舞台裏

 中東情勢悪化により燃油価格が高騰し、化石燃料に依存する運輸業界には深刻な影が差し始めている。

 中でも価格上昇が際立つのが、航空機エンジンに使用されるジェット燃料だ。国際航空運送協会(IATA)のデータによれば、2026年3月14~20日の週平均価格は1バレル当たり197ドル。2月14~20日の95.95ドルからわずか1カ月で、2倍以上に跳ね上がった計算になる。

 ここで注目すべきは、原油価格との乖離だ。同時期の原油価格は1バレル=71.47ドルから110.78ドルと約1.6倍なのに対し、ジェット燃料と原油価格の差を示す「クラックスプレッド(精製マージン)」は、2月の24.48ドルから3月には86.22ドルと約3.5倍へと急拡大。中東情勢悪化による精製施設の稼働不安や、戦闘機などにも使用されることから需給が逼迫し、エアライン各社に激震が走っているというわけだ。

 そこでダイヤモンド編集部が試算したところ、国内航空大手の場合、この燃料費の高騰だけで月間300億円のコスト増に達する可能性があることが判明した。

 燃油費がこのまま高止まりを続ければ、影響は単なる収益圧迫にとどまらない。最悪の場合、航空機を十分に飛ばせなくなるリスクさえ現実味を帯びてくる。

 次ページでは、日本航空(JAL)の具体的な決算数値をベースに試算のロジックをひもとくとともに、燃油高騰が長期化した場合の収益構造や運航へのインパクトを詳報する。