長年、大人を含めた発達障害の診療に当たる星野仁彦・福島学院大学大学院教授・副学長が外来患者を対象に行った調査でも、大人のADHDのうち、85%がうつ病、40%がパーソナリティー障害、38%が不安障害(神経症)、同じく38%が依存症・嗜癖行動(微動制御障害)の合併症を示していた。
大人のASDでも、78%がうつ病の合併症を示すなど、合併症のない人は4%のみだった。
その背景には「幼いころから、親や先生から叱責・注意を受けることが多く、またいじめにも遭いやすいため、自己評価が低い」(星野教授)ことが挙げられる。
Q どうやって診断するの?
大人の発達障害に詳しい加藤進昌・神経研究所附属晴和病院理事長・昭和大学発達障害医療研究所所長は、病院の「大人の発達障害」外来を訪ねてきた受診者のうち、ほぼ半分は発達障害ではなかったという。
個人の性格や特性と、発達障害の症状との間で明確な線引きは難しい。テストやマーカーで、白黒つくわけではない。「障害」と「正常」のラインは微妙で、グレーゾーンは大きいのである。
社会適応に苦労している人たちがメンタルクリニックなどで「うつ状態」と診断され、薬を服用してもあまり効果がないと、診断を受けにくるケースも多い。
前述の通り、ASDはスペクトラム(連続体)と捉えるべきもので、ADHDも不注意と衝動性がごちゃ混ぜ状態になったりする。
医師であっても正確な診断は簡単ではなく、「実際のところ、発達障害といえるかどうか、医師によって診断が違ってくることも珍しくない」(精神科医)という。
安易な自己診断は禁物だが、大人の発達障害の診断基準として評価されているものに、下表の「ハロウェルとレイティの診断基準」などがある。