<論点2>
「住宅の無償供与」は脱税行為にもなる

八田進二/青山学院大学名誉教授・大原大学院大学会計研究科教授
慶應義塾大学経済学部卒業、早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了、慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(プロフェッショナル会計学)。 駿河台大学経済学部教授、青山学院大学経営学部教授、同大学大学院会計プロフェッション研究科教授を経て、青山学院大学名誉教授。2018年4月より、大原大学院大学会計研究科教授。他に、日本監査研究学会会長・日本内部統制研究学会会長・会計大学院協会理事長・金融庁企業会計審議会委員(内部統制部会長)等を歴任。また、複数の企業等の社外監査役および監事を務めている。 《主な著訳書》 『公認会計士倫理読本』(財経詳報社)、『「逐条解説」で読み解く 監査基準のポイント』『逐条解説 内部統制基準を考える』『会計プロフェッションと監査』『会計・監査・ガバナンスの基本課題』『会計のいま、監査のいま、そして内部統制のいま』『会計人魂』『COSO全社的リスクマネジメント』 (以上、同文舘出版)『会計プロフェッションの職業基準』『開示不正―その実態と防止策―』『21世紀 会計・監査・ガバナンス事典』(以上、白桃書房)、『決定版COSO不正リスク管理ガイド』『内部統制の統合的フレームワーク-フレームワーク篇、ツール篇、外部財務報告篇』(以上、日本公認会計士協会出版局)、他多数。

――さらに、今回の逮捕容疑には入っていませんが、オランダの子会社を通じてレバノンやブラジルに高級住宅を購入させたり、挙げ句の果てには家族旅行の費用や、娘の大学への寄附金などを日産に出させる、姉との不正なアドバイザリー契約を結んで年10万ドルを支払うなど、明らかに私的な出費も日産に負担させていたようです。会計的には、これらはどのような問題だと捉えられるでしょうか?

 会社名義で従業員が私的利用するもの、たとえば社宅などを買って提供するというのは、いわゆるフリンジベネフィット(福利厚生費など、会社規定による付加的な報酬の総称)です。しかし、ゴーン容疑者が独占的に使い、かつ家賃などを一切払っていないのなら問題です。家賃相当額は給与と見なすべきなのです。当然課税対象になりますから、ゴーン容疑者はここで脱税をしていたということになります。

 家族旅行費用や姉への報酬、娘の学校の寄附金といった類いも、実質的な給与と考えるべきです。いずれも事業目的とは無縁なので、経費に認められるわけがありません。これは不当な支出であり、背任とも言える、違法性の高い話でもあります。

<論点3>
会社側はどの程度悪いのか?

――独裁者として君臨するゴーン容疑者を駆逐するため、日産の役員たちが立ち上がったクーデターである、との世論醸成がされている印象もありますが、やりたい放題の独裁者をこれまで支えてきた日産経営陣にも大きな責任があるのではないかと感じます。

 両罰規定が適用されるだろうと思いますが、日産の取締役会、さらに監査役会にも大きな問題があります。日産ほどの規模の会社であれば当然、経理・財務はチームで働いています。司法取引に応じた執行役員らがいたわけですが、そのほかの取締役たち、監査役たちは本当に一切、何も知らなかったのか?大いに疑問ですね。歴年にわたって随所で行われてきた不正ですから。断片的であっても、いろいろ耳に入っていたと考えるのが自然じゃないでしょうか。これは取締役会、そして監査役会の機能が果たせていないということです。

 また、たとえば今年6月に提出された有価証券報告書には、西川廣人社長名で「当社の第119期(自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日)の有価証券報告書の記載内容が金融商品取引法令に基づき適正に記載されていることを確認しました」と記載されていますが、西川社長が今回の不正を知ったのは、今年3月だったと報道されています。これが事実なら、なぜ「適正に記載されていることを確認」できたのでしょう?