ソニーとパナソニックという長年の“宿敵”だった2社が、次世代テレビで提携を模索していることが明らかになった。

 次世代テレビとは、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)というディスプレイを使った極薄のテレビのこと。画質はより彩やかになり、厚みは数ミリメートル、省エネルギー性能も高まることが期待されている。年内に韓国メーカー2社(サムスン電子、LG電子)が大々的に発売するため、大きな注目を集めている。

 この現状に歯ぎしりをして悔しがっているのが、ソニーだ。

 2007年、世界で初めて商品化(11型、約20万円)し、高い技術力を見せつけたのはソニーだった。ところが、主力の液晶テレビで韓国勢に押されて、8期連続累計7000億円超の巨額赤字を計上中。「もはや自力では投資できない」(ソニー幹部)のが現実だ。

 そこで同じく韓国メーカーの攻勢に苦しむ、台湾の液晶パネルメーカー大手の友達光電(AUO)との共同開発を進めている。

「昨年、腕利きのエンジニアを20人以上も台湾の工場に送り込んだ」と、あるソニー幹部は明かす。ソニーは最先端技術を供与することで、台湾メーカーの工場を利用し、低コストで次世代テレビのディスプレイを調達するという。

 ところが、である。全く別の生産技術で開発を進めてきたパナソニックが、ここにきて加わるという。なぜか。

 理屈上は、両社の異なる生産技術を合わせることで、開発コストを抑えながら、効率的に有機ELディスプレイを製造できる可能性がある。

 量産化に近いソニーの「蒸着方式」と、将来的なコスト競争力のあるパナソニックの「印刷方式」のいいとこ取りができれば、韓国メーカーへの対抗手段になる。しかし業界内では「大手同士の技術提携で、うまくいったためしはない」と危惧する声も多い。

 それよりも、「“日の丸テレビ”という大義名分を掲げることで、政府などの公的支援を引き出すことが本当の狙いでは」(業界関係者)という声がささやかれている。