しかも、売掛債権が存在しなくても、実在するかのように偽装することが可能だ。故にヤミ金業者が続々とファクタリング業者に衣替えし、大手を振って高額な手数料を得ているというわけだ。
こうした高額な手数料のファクタリングを利用すると、かつての高利貸しと同様、抜け出すのは容易なことではない。
都内で内装工事や美術工芸などを営むB社長が、2者間ファクタリングを利用したのは約6年前のこと。当初、売掛債権を売却して50万円を得たが、今では250万円にまで膨らんでいるという。
「高額な手数料で利益が全て先食いされてしまう。いったん手を染めると、その後も利用し続けざるを得ない」(B社長)という。
まさに憂慮すべき事態だが、法律で取り締まるすべがないのは、すでに述べた通りだ。
昨年、ファクタリング業者が貸金業法違反で摘発された事例もあるが、利息を受け取って返済を猶予するなど、「摘発されたのは容易にヤミ金と認定できる事例に限られる」とヤミ金に詳しい東京情報大学の堂下浩教授は言う。
何より、ヤミ金を取り締まるのは警察の仕事だと、金融庁や経済産業省は実態把握すら行っていない。こうした状況に対し、金融に詳しい公明党顧問の漆原良夫前衆議院議員は、「事例を類型化して状況を把握するとともに、事業者登録を義務付けるべきだ」と言う。
また、中小企業の社長を務めた経験のある自民党の平将明衆議院議員は、「入金と支払いのギャップを埋めるための短期の資金需要は確実にある。そこに年率換算した上限金利規制はなじまない。フィンテックを活用し、合理的な手数料で貸し出せる仕組みをつくり上げるべきだ」と指摘する。
何よりこの先、民法改正によって債権譲渡禁止特約が機能しなくなり、ファクタリングの皮をかぶったヤミ金にとって天国のような時代がやって来る。対策を急がねば手遅れになりかねない。