
日本航空(JAL)が、持分法適用会社のエージーピー(AGP)の非公開化を目指して出した、異例の株主提案を巡り両者の対立が深まっている。AGPは「提案に合理性がない」などと株主提案に反対している。JALはなぜAGPの非公開化に踏み切るのか。AGP案件の担当役員であるJAL執行役員経営管理本部長兼財務・経理本部長の弓崎雅夫氏がダイヤモンド編集部の取材に応じた。特集『株主総会2025』の本稿では、弓崎氏が株主提案を出すに至った背景について説明するほか、AGPの主張に真っ向から反論する。(ダイヤモンド編集部 名古屋和希、田中唯翔)
JALがAGPに異例の株主提案
TOB提案も対話できず株式併合へ
――持分法適用会社であるAGPに株主提案を出しました。経緯をお聞かせください。
株主提案に先立って、1月17日にAGPにTOB(株式公開買い付け)を提案しました。胸襟を開いて協議したいと考えていましたが、面談できたのは1月17日の時のみ。あとは、質問のレターがたくさん来て、回答してきましたが、その後は同じ質問も続くようになっていました。
AGPは2月末に2025年度の新経営体制を開示しました。ただ、(大株主であるJALに)事前に相談はありませんでした。昨年の株主総会で、会社提案の議案が否決されましたが、その議案についても事前相談はありませんでした。もちろん、JALの事前承認が必要だという意味ではありません。もっとコミュニケーションをしましょう、ということを言ってきたのです。コミュニケーションが取れないままのこの状況を放置できないと考えるようになりました。
そこで、TOBではなく、株式併合という手段で進めることにしました。株式併合だと、株主総会で決議しなければなりません。総会は年に1回しかないので、今回を逃すとまた1年たってしまいます。ですので、このタイミングで株主提案を出すことにしたのです。
――そもそも、なぜAGPを非公開化すると決めたのでしょうか。
次ページでは、弓崎氏がAGPの非公開化を目指すきっかけとなったターニングポイントについて明らかにする。また、TOBを実施できなくなった事情を説明するほか、AGPによるTOB回避批判に対し、JALの見解を示す。また、AGPのプロパー出身の現社長が就任する際に、「JAL出身の前社長の処遇を求めた」とするAGP側の主張(本特集の記事『JALに物申す「羽田村の常識はもう通用しない」AGP社長が明かす株式非公開化提案の舞台裏』参照)にも反論する。