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米中摩擦の「漁夫の利」を得てきたベトナムは、2025年にトランプ米政権の関税政策で試練を迎えた。相互関税は当初46%とされたが協議で20%へ引き下げたものの、迂回輸出には40%課税という不確実性が残る。輸出・GDPは堅調でも、対内直接投資、通貨の動向にリスクが残る。(第一生命経済研究所主席エコノミスト 西濵 徹)
トランプ相互関税20%で最悪は回避も
迂回輸出に40%課税
ベトナム経済は、ここ数年にわたって激化の一途をたどってきた米中摩擦の背後で「漁夫の利」を最も得てきたとされる。その一方、2025年はトランプ米政権による関税政策に翻弄された。
米国は当初、同国への相互関税を46%とASEAN(東南アジア諸国連合)主要国のうち最も高水準とする方針を示した。ベトナム経済にとって対米輸出額は名目GDP(国内総生産)比で2割強に達するため、仮に高水準の関税が課せられれば実体経済に深刻な影響が出ることは避けられない。
その後の両国による協議を経て、米国はベトナムに対する相互関税を20%に引き下げる一方、中国による迂回輸出を念頭に、第三国からベトナムを経由して米国に輸出される財に40%の関税を課すことで合意した。一方で、ベトナムは米国からの全ての輸入品に対する関税をゼロとするなど極めて不平等な合意となった。
このように合意内容は不平等ながら、ベトナムは、税率の差が輸出競争力に影響を与える事態を回避し、税率を受忍可能な水準に抑えることができた。早期合意による不透明感の払拭を優先したと考えられる。
相互関税の本格発動を前に、米国向けを中心に輸出が押し上げられる「駆け込み」の動きが確認されたため、本格発動後の反動が懸念された。しかし、その後も輸出は堅調に推移しており、足元の景気をけん引している様子がうかがえる。
これは、追加関税や迂回輸出に関する定義が明確化されていないことが影響していると考えられる。一方、ベトナム政府はより良い合意の締結に向けた協議を継続しており、その帰趨は先行きのベトナム経済を左右すると見込まれる。
次ページでは、ベトナム経済についてさらなる検証を重ね、今後の行方を予測する。








