「終の信託」ジャケット
「終の信託」好評発売中/発売元:フジテレビジョン/販売元:東宝

 最初の定義と比べると、言葉遣いが異なるので混乱するかもしれませんが、塚原は江木から明確な依頼を受けていないことに加えて、「病状が安定していた」「耐えがたい肉体的苦痛はなかった」と指摘し、綾乃の行為が全てに該当していないと批判します。

 これに対し、綾乃は江木の症状、ぜんそくの特殊性などを踏まえると回復の見込みがなかったこと、25年もぜんそくを患った江木には肉体的苦痛を伴っていたことなどを主張し、「本人のために本当に何がいいのか、何をしてあげなければいけないのか、誰も責任を取らないんですか?」と涙交じりに訴えます。

 結局、綾乃がどうなったのか、裁判がどう決着したのか、詳細はDVDをご覧頂くとして、患者の状態や医師の判断は法律で割り切れるほど簡単ではなく、医療現場で試行錯誤が続いている様子が理解できます。

スイスでは外国人の
自殺ほう助を容認

 3番目の類型、つまり自殺ほう助については、最初に取り上げた積極的安楽死と対比させることで議論を進めましょう。積極的安楽死では医師が患者を死なせます。これに対し自殺ほう助では、医師などが用意した薬を使うものの死ぬ是非、タイミングについては、患者が最終的に決定します。

 実は、スイスは「外国人が自殺ほう助を受けられる国」として知られており、いくつかの映画で登場するので、最初に2018年公開の『毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル』を取り上げます。

『毎日がアルツハイマー』は、認知症になった母親と映画監督の生活に密着した良質なドキュメンタリーで、今年公開された『ザ・ファイナル』は3作目になるのですが、過去2作と異なって「死に方」をテーマにしており、多様な死に方を考える1つにスイスの自殺ほう助クリニックが登場します。

 そして映画では 「(注:自殺ほう助には本人の)根性が必要」という現地の責任者による説明があります。つまり、安楽死と自殺ほう助は、最終的な意思決定者に違いがあります。