トランプ政権の案件処理能力が劣化、「壁予算」巡る政府閉鎖はあるか米国が政府閉鎖の瀬戸際にある。トランプ大統領が求めるメキシコ国境への壁建設の予算を巡り、民主党との対立が表面化しているからだ Photo by Keiko Hitomi

米国が政府閉鎖の瀬戸際にある。トランプ大統領が求めるメキシコ国境への壁建設の予算を巡り、民主党との対立が表面化しているからだ。もっとも、問題となっている予算の規模からすれば、それほど壁の建設は難しい課題ではない。むしろ警戒する必要があるのは、「小さな問題」すら処理できないトランプ政権の能力の劣化である。(みずほ総合研究所欧米調査部長 安井明彦)

トランプ VS.民主党の重鎮
公開の場で「異例の対決」の背景

 それは異様な17分だった。

 12月11日、米国のトランプ大統領は、民主党のペロシ下院院内総務、シューマー上院院内総務と、2019年度の予算に関する話し合いを行った。現在、米国政府の一部は、暫定予算での運営となっている。このまま12月21日に暫定予算が失効すると、一部の政府機関は閉鎖に追い込まれる。トランプ大統領が予算を成立させるには、民主党の協力が必要であり、民主党を指揮する重鎮議員との話し合いにより、歩み寄りへの糸口が見つかるかが焦点だった。

 異様だったのは、その会合の冒頭部分である。通常、こうした会合では、冒頭に限って報道陣に撮影が許されるだけで、実質的な話し合いは非公開で行われる。ところが今回の会合では、トランプ大統領が報道陣を退出させないまま、話し合いを進めてしまったのだ。

 それだけではない。多くの報道陣の目の前で、トランプ大統領と民主党の二人の重鎮議員は、互いを猛然と批判し始めた。互いの発言を遮る様子は、話し合いと言うよりも、ただの口論である。いくら党派対立が厳しい米国でも、大統領と議会の重鎮議員が、これほど厳しく公開の場で言い争うのは珍しい。

 しばらく経ってトランプ大統領は、「私が政府を閉鎖する。(政府閉鎖になったとしても)あなたたち(民主党)を責めたりはしない」と言い放ち、ようやく報道陣を退場させた。こうして、歩み寄りの糸口となる期待がかかった会合は、逆に政府閉鎖のリスクを意識させる結果に終わった。この間の異様なまでの対立は、しっかりと映像に記録されており、テレビやネット上で公開されている。