黄色いベスト参加者の正体

 黄色いベストを着て今回の一連のデモに参加する人は、全有権者の2%未満と限定的です。

 ただし、デモには参加していないが、「黄色いベストへの所属意識を持つ人」の数は、全国で1000万人いるとの推定データもあります(ELABEによる緊急調査より)。これは、全有権者の20%にあたり、潜在的なデモ参加者数とも捉えられます。

 複数の専門家によると、暴徒は別として、デモに参加する人の多くは、貧困層(生活保護対象者や完全失業者など)よりも収入が高い低所得者層とみられています。最低賃金かそれより少し高い給与を得て、人により公的手当も受けるが、毎月の家計が苦しいという人々です。その多くは地方に住む白人系国民で、低学歴層の人たちといわれます。

 また先週末には、この黄色いベスト集団に新しい動きが見られました。それまでのデモは、リーダー(代表者)不在で組織化されていない個人の集合体でした。ところが、ここにきてフェイスブック等のSNSを通じ、大きく2つの組織が立ち上がりました。「黄色いベストの自由」と「フランスの怒り」です。

運動は新たな局面に発展

 黄色いベスト運動参加者の組織化は、フランス社会にとって4つの大きな意味があります。

 1つは、政府と参加者との直接対話の実現です。政府は、今回の一連のデモに対し、通達や交渉の窓口がありませんでした。今回の組織化により、話し合い相手(代表者)が特定でき効率的な対応ができるようになりました。

 2つ目は、デモから個別のテーブル交渉に話し合いの舞台を移せることです。これで、デモの鎮静化と同時に、秩序立った対応ができるようになります(現に、先週土曜日のパリ市内でのデモ参加者数は、それまでの4回のデモに比べて激減。その大きな理由の1つが、「黄色いベストの自由」が、パリ市内でのデモ参加を控えるように、全国の傘下メンバーに呼びかけたからといわれる)。

 3つ目は、2年前にマクロン自ら立ち上げた政党「共和国前進」が掲げた「既存の政党政治ではなく市民の力で国を変えよう」という理念と、今回できた2つの黄色いベスト運動組織の理念が一致していることです。現にマクロン氏も、彼らとのオープンな直接対話を提案しています。こうした機会を通じ、彼らを自陣営に取り込み、迫りくる極右や急進左派のポピュリズム政党への対抗軸を固める利点もあると思われます。

 代表民主制(国民が国会を通し間接的に政治参加)はもとより、直接民主制(国民が直接的に政治参加)のあるべき姿を、国民の間で広く議論できる環境が整ったことです。議論は、18世紀のジャン=ジャック・ルソーを皮切りに、これまで国内で、政治家や知識人の間で議論されてきたものに囚われるものではない。また、2015年に部分的に導入された制度や古くからスイス等が導入する制度に囚われない。そして、前述の黄色いジャケット市民団体「フランスの怒り」が提案するような、ネット技術も使い、新しい発想で議論しようというものです。

 このように、今回の黄色いベスト運動は、一連のデモをきっかけに、市民の手による将来の新しい政治と社会の体制づくりに向けたステージに移りつつあります。こうしたプロセスや議論の内容・結果は、EUや世界にも影響を及ぼす可能性もあり、今後の動きが注目されます。