――そういう中国人の自虐も入ったひとひねりのあるツイートが面白いところですね。
「今、中国では、有名人になったら人助けをしなければならないという使命感のようなものを持つ人が増えています。そのため、彼らは公益性につながるツイートをよくやります。たとえば、誘拐事件が起これば犯人探しに協力しようとか、野良犬を救おうキャンペーンとか、難病の基金を広く募るとか。
なかでも中国で『ウェイボー女王』と呼ばれ、約1800万人という新浪微博ナンバーワンのフォロワー数を持つ中国人女優ヤオチェンの活動は有名です。2010年4月の青海省地震の後、彼女はフォロワーのリツイート数に応じてひとり当たり1角(1.3円)の募金を自らが立て替えて被災地に送ると宣言し、13万元(170万円)を寄付したことで大きく注目されました。」
若者の間で大きなブームを呼んだ新浪微博と
VANCL(中国版ユニクロ)の共同プロモーション
――チャリティにさえギャンブル的な感覚を持ち込み、話題を喚起しようという大胆さは、いかにも中国的ですね。ところで、多くの日本企業にとって関心があるのは、ウェイボーのビジネス活用の実情だと思います。中国ではどんなシーンが見られますか。
「すでにさまざまな事例がありますが、中国版ユニクロといわれるファストファッションのVANCL(凡客誠品)の戦略がユニークです。
同社の創業者は出自が中国EC界の第一人者として知られ、独自の生産工場や店舗すら持たず、販売はネットのみで展開するという徹底した低コスト経営を行っています。そのぶん、広告に力を入れているのですが、ウェイボーユーザーのコア世代といえる『80后』の代表的な人物である作家の韓寒や歌手の李寧春などを起用したメッセージ広告が同世代の心をつかみ、流行を生み出しています。
たとえば、新浪微博と共同で行ったプロモーションのひとつに、有名人からマフラーのプレゼントというのがありました。中国語でマフラーを意味する『围脖』の読みがウェイボー(アクセントは異なる)であることにかけ、販促キャンペーンを実施したのです。
このキャンペーンは、VANCLファンクラブのアカウントから転送されることで大きなブームとなったことが話題になりました。企業の公式アカウントではなく、ファンクラブのアカウントのフォロワー数が大きく伸び、彼らの自発的なツイートがブームを盛り上げたのです。なにしろファンが独自に作った非公式アカウントが1000以上もあるのです。