孫正義氏は「クール」なのか
日本人と外国人で割れる評価

 なぜこのようなことを言うかというと、今から10年ほど前、ある台湾の財閥系企業の経営者に「ソフトバンクの孫正義さんは、今日本で一番クールな経営者ですよね」と言われたときに、筆者も「クール」という言葉に違和感を覚えたからだ。

 孫正義氏は確かにすごい人だと思う。だけどそれは、クールとか尊敬という評価に値するのか。それから筆者は、自らが教える大学院で、日本人と外国人留学生(それぞれ就業経験のあるビジネススクールの社会人大学院生)に「孫正義はクールな経営者だと思うか」という問いを毎年投げかけている。

 もちろん、人によって答えは多少違っているが、面白いことに、日本人と留学生とで異なる傾向が見られる。留学生の多くは「孫正義氏はクールで尊敬する経営者」と答えるのに対し、日本人学生の多くは「確かに金儲けはうまいが、クールとか尊敬とは少し違う」と答えるのだ。日本人学生の相対的な評価の低さの理由を突き詰めて問うてみると、多かった答えが「孫正義氏は買収によって現在のビジネスを手に入れたのであって、全てを自分でつくったわけではない」というものであった。

 松下幸之助氏も本田宗一郎氏も、自身で技術を考案し、画期的な製品をつくり上げた。いや、孫正義氏も最初は自身が考案した自動翻訳機をシャープの佐々木正氏に売り込んで、大きな資金を獲得しているのだから、最初は一緒だったのかもしれない。

 ただ、旧松下電器やホンダが自社で開発した技術を自社製品として設計し、自社ブランドで販売していたのに対して、ソフトバンクの主要事業の多くは他社から買収してそれを育てたものが多い。違いはここにあるのだろうか。

 20世紀のモノづくりは内製化と垂直統合の時代であった。自社で開発したユニークな技術を自社製品に搭載することで、技術的なイノベーションを起こしていた。その成功体験が日本人には強すぎたのかもしれない。