前回の増税延期後の17年9月、安倍首相が消費税の使途変更の方針を表明したことは以前からの大きな変化として念頭に置かなければならない。消費税の増収分を幼児教育無償化などに充てる方針を表明し、「使途変更の信を問う」として同年10月に衆議院を解散。総選挙に臨み、結果的に自民党が単独過半数を確保する圧勝に終わった。上野氏は今回、安倍首相が選挙のマイナスとなるような行動を避けるため、消費増税を延期した上で幼児教育無償化などの方針は変えず、バラマキ色を強めていくとみる。

 一方で、国内株式市場の売買を主導する外国人投資家の意見は割れているようだ。今回こそは消費増税に動かなければ財政健全化に向けた信認を失いかねないとの見方がある一方、完全にデフレ脱却を果たしていない現状で内需の逆風となる増税を課すのはナンセンスだとの姿勢も見受けられる。株価を重視する故に「株価連動政権」とも称されてきた安倍政権にとってはいずれも看過できるものではなく悩みどころだ。

 確かにどれだけ対策を講じても今後、消費増税が少なからず個人消費の重荷となるのは避けがたい。ただし安倍首相が政治家として筋を通すなら、リーマンショック級の事態が発生しない限りは増税すると発言し、景気の腰折れを防ぐ増税対策も重ねてきている以上、将来へツケを先送りせず財政健全化の足取りを着実に進めていく必要があるだろう。

 市場からも「個人消費が基調として弱いのは所得不安、ひいては社会保障不安が一因であり、増税して財源があるとアピールする方が得策なのでは」(野村證券の美和卓チーフエコノミスト)との声がある。新聞各紙の世論調査でも「消費増税を予定通り実施すべき」と考える人は、3年前より増加傾向にある様が見て取れる。

過程や経済環境に既視感
今回も安倍首相は増税を延期か

 現政権のキーマンの考え方を見ると、麻生氏が財務相という立場的にも消費増税を行うべきとの立場を貫く一方、菅義偉官房長官は慎重姿勢が根強いとみられている。政権で不動の地位を築く両氏の姿勢も一枚岩でない中、あらゆる要素を加味した上で最終的に安倍首相が今回どのような決断を下すのか。この先の政権の命運をも大きく揺さぶりかねない大きな決断が、三ヵ月後には訪れることになる。

「二度あることは三度ある」のか、「三度目の正直」となるのか――。16年のG7財務相・中銀総裁会議(仙台)や伊勢志摩サミット、増税延期表明の記者会見に至るまで現場での取材を経験した記者の肌感覚としても、将来不安軽減のため「べき論」では対策を万全にして消費増税すべきと考えつつ、予定日までの過程や最近の経済環境には既視感が強まるばかりだ。よって今回も、安倍首相が増税延期に動く可能性は、十分過ぎるほどあるように思えてならない。