同じメンバーであっても組織は変われる

西口 すでにいる社員が考え尽くして、そういう状況になっているわけだから、その人たちの意見はあまり求めないほうがいい。だって、うまくいっていないんだから。そこに答えはない。内部に入っちゃうとバイアスだらけなんです。こうでなければいけない、と勝手に忖度する。当社のプロダクトはここが強みでこうだから、と言い始める。でも、お客さんにとっても、どうでもいい話だったりするわけです。

足立 長く同じ会社にいる人から新しいものは出てこないと言われていますが、それは一般的に正しいと思います。ただ、ある程度、やり方とか実行も含めてできると、同じメンバーでも新しいことができるようになるんですよね。

 実際、ヘンケルのときも、マクドナルドのときも、メンバーは基本的に替わっていない。ちゃんしたやり方さえわかれば、みんな優秀なので、できるようになる。こういうアイディアがいい、ウケるんだとわかれば、協力してもらっているエージェンシーさんも含めて、みんなどんどん出てくる。

足立光(あだち・ひかる)
元日本マクドナルド・マーケティング本部長/上席執行役員
1968年、米国テキサス州生まれ。一橋大学商学部卒業。P&Gジャパン(株)マーケティング部に入社し、日本人初の韓国赴任を経験。ブーズ・アレン・ハミルトン、及び(株)ローランドベルガーを経て、ドイツのヘンケルグループに属するシュワルツコフヘンケル(株)に転身。2005年には同社社長に就任。2007年よりヘンケルジャパン(株)取締役 シュワルツコフプロフェッショナル事業本部長を兼務し、2011年からはヘンケルのコスメティック事業の北東・東南アジア全体を統括。(株)ワールド 執行役員 国際本部長を経て、2015年から日本マクドナルド(株)にてマーケティング本部長としてV字回復を牽引し、2018年6月に退任。その後、アジア・パシフィック プロダクトマーケティング シニア・ディレクターとして、(株)ナイアンティックに参画。(株)ローランド・ベルガーのエグゼクティブ アドバイザー、スマートニュース(株)のマーケティング アドバイザーも兼任。2016年「Web人賞」受賞。翻訳書に『マーケティング・ゲーム』『P&Gウェイ』(ともに東洋経済新報社)等。オンラインサロン「無双塾」主催。

西口 マクドナルドで打ち出した手は、本当に良かった。一番ショックを受けたのは、ベーコンポテトパイの「ヘーホンホヘホハイ」キャンペーンかな。これは正直、悔しかった。このキャッチフレーズだけで、熱さも食感も全部入ってくる。

 だから、マクドナルドを離れるとき、アドバイザーとしてスマートニュースを手伝ってほしいとお願いしたんです。ひとつの会社にずっと勤めていると絶対に視野が狭くなるから。自分の理屈、会社の理屈が優先してくる。僕はスマートニュースに1年以上いるので危険ゾーンに入ったと思っていて。気づけなかったり、見えなくなる。早速、新鮮な立ち位置で、助けてもらっています。

ほどんどの会社が結果をレビューしていない

足立 僕がラッキーだったのは、日本マクドナルドではキャンペーンがとても多かったことです。だから、最初の年はそれなりに失敗できた。2016年は、当たったのは3割くらいだったんじゃないかな。でも、2017年はほぼ全勝。これは、2016年のラーニングをほぼ全部、生かしたからなんです。そのラーニングをまた生かして2018年につなげられた。

 仕事で何が大事かって、ちゃんとレビューして改善する、ということ。これを意外なほど、みんなやっていない。過去に学ばない。でも、組織的にちゃんと過去について学ばないというのは、致命的だと思うんです。

西口 それは僕も感じています。P&Gではありえないよね。でも、しっかりレビューをするという会社はほとんどない。

足立 聞こえてこないね。

西口 だから、暗黙知が誰かに根付いたままやっている。

足立 どうして、ちゃんとレビューして、次に生かさないんだろう。何でやらないのか、すごい不思議。

西口 暗黙知は黙っていたほうが、自分のバリューが上がる、と思っているのかな。暗黙知を形式化したくないというモチベーションが、実は暗黙知を持っている人にあるのかもしれない。それがレビューしない、結果を追求しない、というなんとなく風土、なしのつぶてにするような風土を生んでしまっているんじゃないかな。

足立 そういう空気がもたらしているのか。

西口 だから、そういうのがかみ合って結局、個人技にビジネスがすべて紐付いてしまっていて、組織に形式知が残らず、継続性がなくなって、同じサイクルに入っていくというパターンがすごくあるんじゃないかと思う。

足立 やったことは必ず振り返る。それを次に生かす。本にも書いたけど、日本マクドナルドでは、これを徹底して浸透させた。マクドナルドの場合は、商品数が多いので、それだけ振り返る機会も増える。ちゃんとレビューすれば、学びも増えていくんです。
後編に続く ※1.18(金)公開予定です)

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