2015年には347億円という2001年の株式上場以来、過去最大の赤字額を記録した日本マクドナルド。どん底の状況にあったマクドナルドを、マーケティング本部長(当時)として見事に再生させた立役者の一人が、11月21日に発売されたばかりの新刊『マクドナルド、P&G、ヘンケルで学んだ 圧倒的な成果を生み出す「劇薬」の仕事術』の著者、足立光(@hikaruadachi)氏だ。
足立氏のP&G時代の同期の一人だったのが、スマートニュース執行役員マーケティング担当、西口一希氏だ。P&Gジャパンでマーケティング・ディレクター、ロート製薬執行役員マーケティング本部長、ロクシタンジャポン 代表取締役社長を歴任されてきた西口氏との対談をお届けする。
前編は会社をいかに変えるか、その方法と障壁について。(取材・構成/上阪徹)

ロジック派と思いつき派。
キャラクターが真反対

西口一希(以下、西口) 僕ら2人を知っている人はみんなわかっていますけど、実は同期といっても仲良く肩を組んで酒を飲む、といった親しい関係ではなかったんです。キャラクターが真反対で、水と油というか、ノリが合わないというか。足立さんはものすごいロジック派でした。僕は思いつきみたいなことばかり言っていて、何を言っても論破された記憶がある。

足立光(以下、足立) 実は同じアパートの違う部屋に住んでいたりもして。

西口 同じブランドになって、同じ上司についたこともありました。それから足立さんが先に出世して、僕がその後を追いかけて。僕は17年いることになりましたけど、同期会でちょいちょい顔を合わせていたときに、連絡をくれて。

長く同じ会社にいる人から新しいものは出てこない。西口一希(にしぐち・かずき)
1990年大阪大学経済学部卒業後、P&Gマーケティング本部に入社。ブランドマネージャー、マーケティングディレクター。 2006年ロート製薬に入社、執行役員マーケティング本部長として「肌ラボ」「Obagi」「デオウ」「ロート目薬」等の60以上のブランドを統括。2015年ロクシタンジャポン代表取締役。 アジア人初のグローバル エグゼクティブ コミッティ メンバーを経て、ロクシタン外部取締役 戦略顧問。2019年現在、スマートニュース 執行役員 マーケティング担当(Senior Vice President of Marketing Japan and USA)およびマーケティング コンサルティング会社 Strategy Partners代表。

足立 ワールドに転職しようとしたときですね。当時、P&GのOBで日本企業に行った人はあまりいなかったから。西口さんはロート製薬に長くいたので。

西口 絶対合わないから辞めたほうがいい、って言ったよね(笑)。でも、昔から人の話を聞くけど無視するヤツだから(笑)。ただ、日本マクドナルドは賛成した。本には誰も賛成しなかったと書かれてたけど、絶対に合っていると僕は確信してたんです。

足立 そうだった(笑)。

西口 入社してからすぐに次々に面白いものが出てきて、本当に良かった。ただ、もちろん最初は苦労したと思うんですよ。これはヘンケルでも、ワールドでも同じだったと思いますけど。

中途入社して「会社を動かす」ときに必要なこと

足立 これはマネジメントで入るかどうかに関係なく、最初はやっぱりどこの馬の骨ともわからないじゃないですか。だから、仲間を作ることが大事になりますよね。飲み会でも、麻雀でも何でもいいですけど、こいつの言うことをやってやろうか、というような提案ができる人が何人かいるといい。だって実績がないわけじゃないですか、何も。

 それで動いてもらって早めに実績を出すことがとても大事。まずは味方を作り、小さくてもいいから早めに結果を出す。

西口 僕は基本的に結果がないと味方は作れないと思っていて。とにかく結果を早く出すことを考えていました。やってはいけないのは、理屈ばっかりこねること。それよりも、理屈はさておき、まずは結果を出しちゃう。実行して結果を出して、その結果にみんなが興味を持った時点で組織を引っ張っていく。

 結果がないと理屈だけでは人は誰もついてこないし、理屈に対して議論が始まって余計なエネルギーを使うことになる。それよりも、とにかく結果を作っていく。そこまで持っていく力がないと難しいと思う。特に再生などの場合は。

足立 僕の場合、前任者が何人も1年ほどで辞めていたので、遠慮しなかったし、せずに済んだ状況にあったのも良かったのかもしれない。まわりの意見を聞く必要もなかった。