
新潟県には信金・信組だけで20、地域銀行を含めると現在23もの金融機関が存在する。だが、都道府県別の実質総生産と金融機関数の比率を比べると、新潟県は全国3位の“過密度”であり、明らかに金融機関数は過剰といえる。
新潟は土地が南北に長いため、「営業地区が重なっていない」(新潟県の信金関係者)。そのため、「メーンバンクに地銀が一つ、サブバンクに信金か信組が一つの企業が多い」(同)など業態ごとの定位置があり、以前から競争意識が醸成されにくかったという。
加えて、「各地域の地場産業に支えられた自負を持つ中規模の信金が点在しており、お互いが不仲」(別の新潟県の信金関係者)のため、再編が停滞しがちなのだ。
競争意識の低さと再編停滞をもたらした地域性は、昨今の厳しい収益環境では完全に裏目。そこに、ある調査結果が拍車を掛ける。帝国データバンクによると、新潟県は企業の休廃業・解散件数が都道府県別で全国10位。一方、東京商工リサーチによると、新規法人の設立比率は全国ワースト3位と、企業の減少傾向が著しい。
もっとも新潟信金のように、「将来ビジョン」という経営指針を若手職員が策定し、「地域財団や政府系金融機関と提携し、創業支援に本腰を入れる」(江川哲史専務理事)と意気込むところもある。
だが、こうした取り組みが軌道に乗らなければ、「支店の統廃合により劇的にコストを削減できる」(別の信金幹部)合併という“切り札”を出すのは必至だ。
このように新潟県の危機感不足に注目してきたが、「何もしていないと思われる金融機関は全国にある」(関東地方の信組理事長)。そのため、次なる大再編はどこで起きても不思議ではない。
今や業界全体は、地域経済の緩やかな衰退以外にも、再編の引き金となる複数のリスク要因を抱えている。マネックス証券の大槻奈那チーフアナリストは、「融資額に対する貸倒引当金の比率は歴史的な低さ。金利上昇局面を迎えたとき、増加傾向にある不動産向け投資などの分野が、不良債権化する懸念がある」と指摘する。
他にも金利が上昇すれば債券価格が下落し、有価証券運用益の恩恵を受けてきた金融機関の打撃は大きい。また、先端機能を備えたフィンテック企業が台頭してきたときには、旧来の信金・信組は預金や決済機能を奪われ“用済み”になる可能性すらある。
では、こうしたリスクが顕在化したとき、真っ先に再編に着手せざるを得ないほど凋落傾向にある信金・信組はどこなのか。
それを浮き彫りにするため、本誌で過去3回実施した信金・信組の財務指標に基づく「勝ち残りランキング」の各得点を偏差値化。その平均値を「勝ち残り偏差値」として算出し、業態別のワースト10を導き出した(下表参照)。