わざわざ一番高いコースを頼む
意外な理由

 この会社の系列の焼き肉店にも、中国人から来日前に「〇月×日の午後7時に4人でお願いします」と予約が入るそうだが、その際、彼らから「できるだけ高いお肉や、珍しいブランド牛を食べたい」というリクエストが入るそうだ。

 この女性によると、焼き肉だけではなく、他の日本料理店でも「いちばん値段の高い会席料理のコースをお願いします」というのが最も多いリクエストだとか。

 そう聞くと、「富裕層は単にお金があるから、高いコースを選んで食べているだけでしょう?」と日本人は思ってしまうが、理由はそれだけではないらしい。

「彼らはお金があるから、というだけで高い料理にこだわるのではありません。彼らが心配しているのは、『値段が安い料理=料理人が手を抜いているのでは?』という疑いです。それに『安い料理は(中国人や他の外国人には提供するけれど)日本人は決して食べないものなんでしょう?』とも思っています」

「中国人は、自分たちの国ではそうだから、『安い=本物ではない』と思っているんですよね。『きっと手を抜いているから、そんなに安い値段で出せるんでしょう?』なんてことも言われます。こちらがびっくりして『そんなことは決してありません。日本ではこのくらいの料金でも、十分すばらしいお料理を出しています。お店に来る日本人もまったく同じものを食べています』といくら説明しても、信じていただけない場合もあります」

上海の高級日本料理は
びっくりするほど値段が高い

 私はこの理由を聞いてとても驚いたが、中国人観光客がそんなふうに誤解してしまうのには、彼らなりの理由がある。

 自分たちの国しか比較対象がないからだ。

 その上海などでは、安い“日本風”の料理から、きちんとした食材だけを吟味して使った高級日本料理までさまざまな日本料理が存在する。安い“日本風”の料理しか食べていない人は、それが本物だと思ってしまうし、高級な日本料理を食べたことのある人は「日本人は家でもこういうものを食べているのか」と誤解してしまう場合もある。