世の中には、生涯で本を5冊も読まない人が大勢います。
「購入された書籍全体の95%が読了されていない」のです。
でも、途中まで読もうとしただけでも、まだマシです。
「購入された書籍全体の70%は、一度も開かれることがない」のですから。
「最初から最後まで頑張って読む」「途中であきらめない」
こんな漠然とした考え方は、今すぐ捨ててしまって結構です。
これから紹介する1冊読み切る読書術さえ身につければ!

ベストセラーはお手軽な雑談ネタ

明治大学文学部教授・齋藤孝氏齋藤 孝(さいとう・たかし)
1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー著作家、文化人として多くのメディアに登場。著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社文庫、毎日出版文化賞特別賞受賞)、『身体感覚を取り戻す』(NHKブックス、新潮学芸賞受賞)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)など多数。<写真:読売新聞/アフロ>

前回は、街なかにある書店に行って、偶然の出会い(セレンディピティ)を楽しむことをおすすめしました。

なにを読もうか迷ったとき、とりあえず今売れている「ベストセラー」を買ってみるというスタンスは有効です。
シンプルに「みんなが読んでるから」という理由だけで、とにかく売れ筋を買って読んでみるのです。
流行りものに触れていると、みんなと話が合いやすいことが大きな理由です。

ベストセラーは、雑談ネタとしてお手軽なトピックになります。

映画でいうと、2016年に『シン・ゴジラ』や『君の名は。』がヒットしたとき、
私はすかさず上映館に足を運びました。
特にゴジラが好きでもアニメが好きでもないのですが、
大勢の人が観ているヒット映画は押さえておこうと、すぐ行動に移したのです。

迷ったらとりあえずベストセラー

もっと前、2014年に『アナと雪の女王』がヒットしたときも、
上映館まで足を運びました。
幼児も観るような映画ですが、それでも流行っているという理由だけで観たのです。

すると、面白いほどいろんな人と話が合う、合う!
学生、社会人、年齢や性別を問わず、初対面の人とも話が盛り上がったくらいで、
その影響力に驚かされました。

これと同じように本のベストセラーは、
大まかな内容を押さえておくだけでも学校や職場、商談先での雑談に使えます。

「あれ、読みました?」
「読みました、読みました、あの赤いカバーの本ですよね」
「そうそう、それです!」

この程度の浅い会話でも十分に共感し合えますから、
“とりあえずベストセラー”は“とりあえず損しない”のです。

ベストセラーは、必ずしも良書とは限りません。
それでも「なぜこの本が売れているのか?」という疑問を掲げ、
それを考えながら読み、自分なりの結論を人に伝えることで、
考える力も読み切る力も身についていきます。