貧困といえば、こんなイメージを抱く読者も多いだろう。就業形態や年齢だけでなく、地域格差も重要なテーマである。そして、東京への一極集中が進んだことで、地域間の格差や貧困の問題は、大都市と地方の対立構造という視点で語られることが主だった。
都心近郊にマイホームを構え、中間層の多くを構成するビジネスパーソンにとって、実家のある田舎の貧困を意識することはあっても、日々の生活圏である都市部の貧困は、なかなか想像しづらいに違いない。だが、実際には都市部でも貧困は進行しており、都市部の中でも格差が広がっている。
そこで本誌は、その実情を明らかにするため、橋本健二・早稲田大学教授の協力を得て、首都圏の貧困と格差の実態を可視化した。
具体的には、都心から半径60キロメートル圏内を、約1キロメートル四方の7700カ所ほどのエリア(地域メッシュ)で区切り、エリア内の平均世帯年収を色で分けて地図上に示した。メッシュ人口が100人未満は除外し、色を塗っていない。
こうしてできたのが、下に示した地図である。左が2000年、右が10年のデータだ。
二つの地図を比較して一目瞭然なのは、全体的な収入の落ち込みである。2000年は年収500万円台のエリアが首都圏全体に広がっていたが、10年になると400万円台以下が急拡大している。
600万円以上の比較的裕福なエリアは、2000年は主要鉄道沿線を中心に埼玉県や多摩地方、千葉県の湾岸部まで広がっていたが、10年後は軒並み消滅した。
また、地図では分かりづらいが、都心への富裕層の集中は加速している。10キロメートルごとの円で区切った広域エリアの平均世帯年収は、都心10キロメートル圏内では2000年の561万円から10年は573万円と唯一アップ。一方、2000年に572万円と最も高かった20~30キロメートル圏は508万円まで落ち込み、近郊エリアの凋落が見えてくる。
公営団地だけでなく新宿、池袋の近くにも
都心の身近な貧困
ただ、収入格差が拡大しているため、平均年収で見た場合には、富裕層が多いと貧困層の存在が埋もれてしまう。そこで、メッシュ内での年収200万円未満の貧困世帯の比率を、先ほどと同様に地図化したのが下の図である。