上海に住む20代の男性会社員の場合、実家は東北部の黒竜江省ハルビンだ。上海からハルビンは飛行機なら3時間半、高速鉄道(日本の新幹線に相当)ならば12時間だ。だが、それはどちらかの切符が運よく手に入った場合の話。春節の切符の入手は非常に困難で、この男性によると「発売1分後にはすべて完売」というほどの争奪戦になる。運悪く切符を入手できなかった場合は、普通列車に24時間近く乗らないとハルビンに帰ることができない。

 しかも、ハルビン駅から実家がある村まではバスで4時間以上かかる。バスの本数は多いが、同時期に帰省客が集中し、渋滞もあるため、どれくらいで家に到着できるかわからないという。そうなると、少なく見積もっても、上海から実家にたどり着くまでには30時間くらいは覚悟しておかなければならない。

大変だけど
家族のために帰省しなければならない

帰省客で大混雑する上海の地下鉄駅帰省客で大混雑する上海の地下鉄駅 Photo by Kei Nakajima

 広大な中国なので、移動に時間がかかるのは仕方がないとしても、真冬の時期に大勢の人々や荷物にもみくちゃにされながら長旅をしなければならないのは、体力的に相当な苦痛(昔は交通手段が限られていたので、もっと移動が大変だったが、今ではネット上での切符の争奪戦だけで疲弊してしまう)。それだけではない。帰るにはたくさんのお土産を用意しなければならない上に、親戚への挨拶まわりも「どの親戚から順番に挨拶に行くか」が重要で、それを考えるだけで頭が痛くなるというのだ。

 夫婦のお互いの実家が遠距離ならば、これもまた大問題。「今年はどちらの実家に帰るか」「どちらの実家から順番に帰るか」で、大ゲンカになることもしばしばある。春節中に2回も大移動を行わなければならないからだ。

 しかし、それでも家族のために帰省しなければならないと思うのが、今もスタンダードな中国人の考え方だ。「春節は家族で一緒に迎えるもの。お土産をたくさん持って帰り、新年は一家だんらんで食卓を囲む。それが親孝行だ」というのが昔から中国人の脳裏に染みついているからだ。