私は、ドイツに住み始めた1990年以来、毎年少なくとも1回は講演や出版社との打ち合わせのために日本に来ているが、そのたびに顧客サービスの水準の高さに感動する。ふだん住んでいるドイツとの差があまりにも大きく、ドイツに住んでいる日本人は、私だけでなく日本に一時帰国するたびに似たような感想を抱いているだろう。

 まず、24時間営業のコンビニエンスストアの数がものすごく多い。しかも、これらの店では宅配便を発送したり、切手を買ったり、映画のチケットを買ったり、ホテルの部屋を予約したり、文書をコピーしてそのままファックスとして送ったりすることができる。一方、ドイツで夜に買い物をできるのは、ガソリンスタンドか大きな駅の売店くらいだ。しかも、置いている品数は、日本のコンビニエンスストアに比べて桁違いに少ない。

 さらに、日本ではコンビニエンスストア以外のスーパーマーケットの中にも、夜中まで営業している店がある。さらに祝日・休日は当然のこと、正月三が日も店を開けている商店が増えている。これらはすべて消費者思いの営業時間だ。夜遅くまで仕事をする会社員や、祝日に急に買わなくてはならないものに気づいた時には便利である。一方、ドイツでは日曜日やクリスマス(12月25日・26日)などの祝日には原則として全ての店が閉まっている。このため、消費者は平日までじっと待たなくてはならないのだ。

 また、日本では商店やレストランでの接客態度においても、“お客ファースト”なのが伝わってくる。私が知っているドイツ人夫婦は、15年前に初めて日本で休暇を過ごしたが、「日本でお店に行くと、店員の態度がとても丁寧なのに感心した。客が店内の商品をゆっくり見られるように、客に対して押しつけがましい態度をとらない。しかし、客が何かを知りたいなと思うと、すぐに飛んできて親身になって考えてくれた」と語る。

 このように、日本の店員は客の振る舞いには細心の注意を払っており、客が何かを知りたそうな素振りを見せると、すぐに客のところに駆けつける。決して押しつけがましくなく、しかも客を放っておくわけではない。この客との「間合い」のとり方が絶妙だとドイツ人の知り合いは感じたのである。

日本の「便利さ」が気持ちのゆとりを奪っている!?

 このように行き届いたサービスは、いまや日本人にとって普通のことなのかもしれない。例えば、日本の書店で本を買うと、店員から「紙のカバーをおかけしますか」と必ず聞かれる。紙カバーをかけるだけでなく、ビニール袋にも入れてくれる。そもそも、本にカバーをかけるのはなぜだろう。電車の中で何の本を読んでいるかを他の乗客から見られないようにするためだろうか。それとも本の表紙がカバンの中で折れたり、食堂のテーブルの上で汚れたりするのを防ぐためだろうか。いずれにしても、ドイツでは本に紙カバーをかけるサービスは存在しない。