明石市長の白黒を論じるよりも
役所のドロドロ体質に光を当てるべき

 では、なぜこの職員はそんなことをしたのかというと、権力欲を満たすためでも、何かの利権を貪ろうとしたわけでもない。本人に伺うと、「自分がやりたいことをやるため」だという。

 ご存じのように、役所という世界は民間と異なり、競争がない。仕事ができる、結果を出した、という人が評価をされて、グングン出世をするというわけではなく、大きなミスや、キャリアに汚れのない人が取り立てられていく減点主義である。

 そのため、彼のように閑職に追いやられて、一度出世コースから外れてしまうと、なかなか復活ができない。どんなにあがいても、どんなにアピールをしても競争原理が働かないのだ。

 ただ、一つこういう人が復活できるチャンスがある。それは市長を引きずり降ろすことだ。市長が変われば、役所の秩序もガラリと変わる。そこで、自分の味方である人物が市長というポジションにつけば――。

 もうお分かりだろう。これこそが「役所内で盗聴が横行している」という問題の本質なのだ。

 自分の力では、どうやっても上がることができない。でも、上がりたい。そうなると、自分が上がるのを阻んでいる者、つまり「政敵」を自分よりも下へと引きずり降ろすしかない。

 このような役所の減点主義による「敵を引きずり降ろす文化」こそが、民間企業よりも「盗聴」が横行してしまう最大の原因ではないか、と個人的には考えている。

 もちろん、世の大半の公務員は盗聴などしないマジメな方たちばかりだ。市民の役に立ちたいと、我が身を削る立派な方も多い。取材を通じて、筆者もそういう方たちにもたくさんお会いした。

 ただ、これまで見てきたように役所内で盗聴が横行しているのは紛れもない事実であり、しかもその多くが組織を自浄するためなどではなく、権力闘争に用いられているという現実もある。

 それはつまり、役所に勤める人たちが、職場に希望を抱けない、キャリアパスに閉塞感を感じているということでもある。

 暴言市長を叩いてスッキリし、その後に全容が分かるや否や、今度は市長をかばってスカッとする…というように、単純なショーとしてこのニュースを消費するのではなく、なぜこんなにも公務員が「敵を引きずり降ろすこと」に心血を注ぐのかを、今一度考えていただきたい。