EVP ハードウェアエンジニアリング&オペレーション担当)
Photo by Toshiaki Usami
「プレイステーション(PS)」──。ゲームをやらずとも存在を知らない者はいないであろうソニーグループの家庭用ゲーム機である。その4代目に当たるPS4は、PSの進化の在り方を問い直した製品だ。
PS3はある意味、“すごい”ゲーム機だった。例えば、ゲーム機のコア部品である中央演算処理装置だ。PS3は超高画質を実現するため、なんと医療の学術分野に貢献するほど演算能力の高い独自の処理装置を搭載していた。
これはひとえに、PSを「最先端の技術を使い、時代の先を行く尖った製品にしたい」というPS開発者に代々受け継がれてきた熱い思いの表れだった。だが、PS3からハードウエアの責任者として開発を率いてきた伊藤雅康によれば、その分、犠牲にしてしまったこともある。
一つは価格だ。PSの開発者の間では、経験則により、売れやすい価格として399ドルという「マジックプライス」が認識されている。ところが、独自性を追求したPS3の発売当初の希望小売価格は599ドル。顧客にとって高過ぎる面は否定できなかった。
もう一つは、ゲームソフトの作りにくさだ。ゲームクリエーターはゲームソフトをPCで作っている。にもかかわらず、PS3は独自の処理装置を搭載したことで、PCとは別の構造を有していたからだ。これではゲームソフトの本数が増えにくい。