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auカラーリングの5G実験車と4G実験車 筆者撮影

 KDDIは2月9日、5G回線を使って公道を走行する自動運転車の実証実験を報道関係者に公開した。

 実験が実施されたのは愛知県一宮市にあるKDDI名古屋ネットワークセンター周辺。同センターには5Gの基地局(28GHzとSub-6、使用されたのは後者)が設置され、周辺の公道を5Gのアンテナを搭載したエスティマが200メートルほど走行。また、対向車線には、4Gのアンテナを搭載したエスティマも走行し、両車が何度もすれ違った。

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一宮の公道を走る5G自動運転車
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天井にはエリクソンの5Gアンテナが設置されている

 自動運転ということで運転席には誰も座っていない状態で公道を走っていた。助手席には人がいるのだが、システムを監視しているだけだ。

 自動運転は、車の天井に設置した赤外線レーダーで周辺の状況を把握。事前に登録した高精細な地図データをなぞる形で走行する仕組み。レーダーで車や人物などを把握して、自動で緊急停止や左折などもする。

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赤外線レーダーで周辺の状況を把握する
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ディスプレイにはレーダーで捕捉した周辺を走る車や人が表示されている

 5Gや4Gの通信は遠隔監視に使われた。ネットワークセンター内には遠隔監視ルームがあり、車に設置された5つのカメラから配信されてくる映像を監視し、いざというときに遠隔で車を操縦できる体制になっていた。1人で2台の車(5Gと4G)を監視できるのが今回の特徴だ。

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監視センターでは2台の車から送られてくる映像をチェックする

●5Gの低遅延が自動運転に生きる

 5Gは高速大容量、超低遅延がネットワークの長所とされている。今回の実験では、どれくらい低遅延で送信できているか具体的な数値は非開示とされていた。しかし遠隔で操縦するには問題のない遅延だったとのことだ。

 ただ、ネットワーク部分での遅延はほとんどないが、映像を圧縮する際にどうしても遅延が発生してしまうという。そのためKDDIでは「映像を圧縮などせず、そのまま送ってしまうというやり方も検討の余地がある」とのことだった。

 映像を圧縮せずに送る技術はすでに存在しているため、5Gの低遅延を生かす意味でも、映像を圧縮しない伝送方法も採用することもありえそうだ。

 これまでの実験では時速15kmが限界だったが、今回は時速30kmで走行できる認可のもとで実験をしたという。5Gの低遅延で時速40kmでも対応できるが、安全に配慮して今回は時速30kmにとどまったという。

 将来的に時速40〜50kmに対応できるようになると、かなり実用に期待が持てるようになりそうだ。

●日本では高齢者支援にも期待

 自動運転といえば、アメリカのほうがニーズが高く、また公道での実験も様々な都市で実施されているなど、日本は取り残されているイメージがあった。

 実際、今年ラスベガスで開催されたCESでは会場周辺に自動運転のLyftが30台走行しているなど、実用化に向けてまっしぐらといった印象だ。

 しかし今回、ごく短い距離ではあったが、公道での走行実験に成功したことで、日本での自動運転の実用化に向けて一歩前進したように思う。

 特に日本では地方で高齢化が進み、自動車を自分で運転できなくなる人が増えている。買い物に行けなくなる「買い物難民」が深刻で、労働力不足も同時に進みつつある。タクシーやバス会社の経営が苦しく、運転手の確保もままならない。

 通信に対応した自動運転車が普及すれば、食べ物や日用品を乗せた自動運転車が買い物難民の地域を自動で走る「自動行商車」として買い物をサポートできるようになるだろう。

 また、病院に行きたいときも、自動運転車が家まで迎えに行けるようになる。

 そのとき自動運転車を呼び出すのはスマホやタブレットのアプリだ。通信によって自動運転車が家にやってくる。車の中にいる人の様子を把握するためにも、通信で映像を送る必要が出てくるのだ。

 KDDIの取り組みは、そうした未来の車社会に向けた一歩だ。2020年に5Gが商用化されれば、「自動運転と5G」という取り組みが一気に進んでいくだろう。


ishikawa

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。