「成績優秀な大学生が自宅やオフィスをお掃除します」。フロリダ大学の学生が創業した清掃サービス会社、スチューデント・メイド。創業から10年、“非常識なまでに徹底した、社員を大切にする経営”により、全米で大評判となった同社の採用面接には、今やミレニアル世代を中心にさまざまな世代が押し寄せるという――。この連載では、同社の創業者、クリステン・ハディードの著書『離職率75%、低賃金の仕事なのに才能ある若者が殺到する奇跡の会社』(クリステン・ハディード著/本荘修二監訳/矢羽野薫訳)の記事からその驚くべきストーリーやノウハウを紹介し、同書にインスパイアされた各回で活躍されている方のインタビューを掲載していきます。今回は、出張レストランサービス「マイシェフクイック」を運営する清水昌浩さんが、『奇跡の会社』の読書体験をシェアしてくれます。(構成/西川敦子、撮影/タキモトキヨシ)

やる気ゼロの若手をその気にするありえない方法

清水昌浩
マイシェフ代表取締役社長
名古屋大学法学部卒業後、アクセンチュアにてクライアント企業の変革に携わる。ネットベンチャーのデジタルフォレストでの勤務、サンフランシスコのスタートアップ企業のGinzametricsの日本責任者を経て、マイシェフ株式会社を創業。出張レストランサービス「マイシェフクイック」、出張シェフサービス「マイシェフ」を提供・運営する。

本荘 清水さんが代表取締役社長を務めるマイシェフでは、「マイシェフクイック」というサービスを展開していますね。レストランの本格料理をサービススタッフが自宅に持参し、出張料理してくれるとか。本書、『離職率75%、低賃金の仕事なのに才能ある若者が殺到する 奇跡の会社』のスチューデント・メイドも出張清掃サービスの会社なので、読んでどう感じたのかとても気になりました。

清水 本荘さんから話を聞き、「まさに自分のための本だ、読むしかない!」とゲラを送っていただきました。読後の印象を一言でいいますと、「苦笑いしながら読む本」ですね。

本荘 苦笑いしながら読む本、ですか(笑)? どういうことなのか説明していただく前に、まずはマイシェフクイックのサービス内容について教えてください。

清水 マイシェフクイックは出張レストランサービスです。フレンチやイタリアンレストランの料理をオンラインで発注できます。ふつう、出張シェフといえば料金も高めで富裕層向けのイメージがありますが、このサービスのお客様は子育て中のママや、高齢で外出しづらい家族のいるご家庭など。外食しづらい人も自宅でゆったり食事を楽しむことができます。

お客様のもとにお伺いするのは、プロの料理人ではなく、登録しているサービススタッフ。加盟レストランでつくった料理をご自宅の台所で仕上げ調理し、ご提供します。サービススタッフは、平日は会社にお勤めの女性や、子育てが一段落した女性、既に定年退職された女性が多いですね。

本荘 ケータリングとも違うわけですね。

清水 そうですね。マイシェフクイックでは料理を宅配するだけでなく、仕上げ後に盛りつけ、後片付けまで行います。女性としては、お祝いで家族が集う際にプラスチック容器の料理を並べるわけにはいかないでしょう。結局、食事の後は後片付け、皿洗いをしなければならない。女性がしんどい思いをせず食事とその場を楽しめたらと思い、このサービスを立ち上げました。

本荘 これまでになかったサービスですね。うちでもぜひ利用したいです! で、本題に入りますが、苦笑いの理由を聞かせてください。

清水 先にお断りしておきますが、苦笑いといっても、けっして否定的な意味ではありません。思わず苦笑いしてしまうくらい、彼女と僕とは考えかたが違っていて、つまり、それだけ学びが大きい本だったということです。もし、自分と同じような考え方について書かれた本なら、共感したり、それまでのやり方に自信を持ったりすることはあっても、深い学びや発見にはつながらないのではないでしょうか。

クリステン・ハディードさんの判断や意思決定は、男性である私の視点から見て「甘い」と感じられるところがいくつかありました。率直にいって、「そんなことまでするの?」と感じたエピソードもあります。たとえば、素行不良なスタッフに厳しい通告を伝えようと決めたのに、本人を目の前にすると抱きしめてしまうくだりがありましたよね。

本荘 やる気のないスタッフを励ますため、チアリーダーの真似までしてみせた。あのくだりを読んだときは私もあっけにとられました。

「バスルームの担当になると最悪よね。わかるわ。でも、頑張ってくれてありがとう」
 ビルは丸めていた背中を少し伸ばした。ゆっくりと笑顔が広がる。死の淵からよみがえったかのようだった。そう、その調子よ。
「便器のカーブに合わせてブラシを回すの。ヘリコプターみたいに!」
 私は手拍子を始めた。足を滑らせるようなステップでバスルームの入り口に向かい、ヒップホップのリズムを刻みながら後戻りした。いつの間にかビルも便器の前でダンスの真似事をしてブラシでリズムを取っていた。彼は笑っていた。私も笑っていた。
『離職率75%、低賃金の仕事なのに才能ある若者が殺到する 奇跡の会社』97ページ)

清水 もちろん、彼女が間違っているとはまったく思いません。お互いの寄って立つところ、正しい、好ましいと思うものが違うだけ。繰り返しますが、それらこそ学びのポイントだと思います。私以外の年配の男性起業家や管理職も、彼女から学べることは多いのでは、と思いましたね。

もう一つの苦笑いの理由は、経営者がぶつかる状況とそのときの心情がじつにリアルに描かれていたことです。問題が起きて対処したところ、うまくいったと思ったら反作用が出て、ますます問題が大きくなってしまった――などなど。いろいろな試行錯誤が、経営当事者としてしみじみ身につまされました。