欧州不安が世界の市場を振り回している。最大の懸念はギリシャだが、ここにきてスペインの金融システム不安という別の火種が大きくなってきた。欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)は何が何でも最悪の事態は回避しようとするだろうが、市場の不安は簡単には収まりそうにない。危機の連鎖は止められるのか。

投げ売りされるマドリード近郊のマンション
Photo:REUTERS/AFLO

 ギリシャのユーロ離脱懸念がくすぶる欧州で、別の火種が大きくなっている。

 焦点は、スペインである。不動産バブルの崩壊による銀行の不良債権増大と、地方政府の財政難が深刻化。市場は、アイルランドの二の舞いになるのではないか、と不安視している。アイルランドも、不動産バブル崩壊から金融危機に陥り、銀行への公的支援で政府債務が増大、財政が悪化した。最後は政府が資金繰りに行き詰まり、2010年11月、金融支援要請に追い込まれている。

 スペインの住宅価格は、ピーク時から約20%下落しているが、アイルランドに比べ落ち方は緩やかだ。つまり「不動産価格の調整は道半ば」(伊藤さゆり・ ニッセイ基礎研究所主任研究員)である。一方で銀行の不良債権比率は08年の1%から足元で8.4%まで上昇しており、不動産価格下落によるさらなる増大 は不可避だ。
 

 スペイン政府も、国内金融機関の再編を進めるとともに、引当金の積み増しと自己資本比率の増強を義務付けるなど、手を打ってはいる。しかし、引当率を今年2月以降段階的に引き上げたことは、市場には「状況の悪化」と捉えられてしまった。前提となる資産評価が適正な価格なのか、あるいは正常債権と分類されているものは本当に大丈夫なのか、という疑念もある。政府は外部の監査機関に資産評価を依頼し、さらに欧州中央銀行(ECB)と国際通貨基金(IMF)が監督につく見通しとしているが、疑念を払拭するには至っていない。