ギリシャのパパデモス首相(右)とベニゼロス財務省(左)。与党支持率は急落しており、改革実行には暗雲が漂う
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 2月21日、ギリシャへの第2次支援策がようやく合意に至った。欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)が1300億ユーロを支援するとともに、ギリシャの債務を大幅に減免する。

 これまで民間債権者と欧州中央銀行(ECB)を筆頭とする公的部門で、どう負担を分担するかでもめ続けてきたが、結果としては“痛み分け”となった。民間債権者は、債務交換により額面で53.5%借金を棒引きし、また交換後の利率も3年間は2%など低くする。一方ECBと欧州各国の中央銀行は、ギリシャ国債の購入で得た利益を実質的に同国の支援に回し、また1次支援での融資の金利を引き下げる。

 この支援策が合意内容どおりに実行されれば、ギリシャの今後の資金繰りは大幅に楽になる。3月20日に迎える145億ユーロの国債償還を乗り切れるだけでなく、その後も、これまでのように国債償還の3ヵ月ごとに危機に陥るような状態は避けられるだろう。

 ただし、あくまで実行されれば、の話である。懸念材料は多々残る。

 まず、民間債権者の債務交換プログラムへの“参加率”が当座の焦点だ。ギリシャはこれから、各債権者の合意を取り付けなければならないが、債務削減計画の前提とされる9割の参加を達成するのは容易ではない。

 ギリシャ政府は“脅し”として、一定割合の債権者の同意が得られればすべての債権者に対して強制的な債務交換も可能となる「集団行動条項」をちらつかせているが、これがどの程度参加率引き上げに効くかは不透明だ。

 一方で、もし脅しに終わらず債務交換が実際に強制された場合、「周辺国の国債の信用にまで疑念が広がりかねない」(藤岡宏明・大和証券キャピタル・マーケッツ金融市場調査部副部長)。

 さらに、今後ギリシャの財政赤字の削減が計画どおりに進まず、さらなる支援が必要となる懸念もぬぐい切れない。ギリシャ国民のあいだでは、緊縮財政とそれに伴う景況悪化への反感が日に日に高まっている。4月に予定されている同国の総選挙で、もしも緊縮財政を推し進める現政権が倒れるようなことになれば、大きな波乱要因となる。

 第一生命経済研究所の田中理主任エコノミストは、「ギリシャが追加支援を受けられるのは、危機がイタリア、スペインなどに波及するリスクがあるからだ」と指摘する。EUやIMFが辛抱強くギリシャ支援を続けてきた理由はまさしくこの1点にある。

 逆に、波及リスクが消えたと判断されれば、支援が打ち切られ、債務不履行(デフォルト)に至る可能性もある。そして、いざギリシャがデフォルトしたとき、リスクが周辺国に波及しないという確証はない。欧州の火種はくすぶり続ける。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)

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