10月27日にユーロ圏がやっとの思いでまとめた、財政危機脱却に向けた包括戦略。11月3日開幕のG20首脳会議でEFSF(欧州金融安定化基金)拡充のための出資取り付けなど肉づけを図る目論見は、ギリシャの国民投票騒ぎで崩れてしまった。それどころか、ついにイタリアにまで危機は飛び火してしまった。

独仏に緊縮実行を求められたギリシャは大連立内閣成立で危機を回避(右上)。国債利回り急騰で辞任に追い込まれたベルルスコーニ首相(左)。危機に対し有効策を打ち出せなかったG20(右下)
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 11月9日、イタリアの10年物国債の利回りは急騰し、ギリシャなどが金融支援に追い込まれた危険水域とされる7%を上回り、終値で7.251%を付けた。前日8日も財政再建策の実効性に対する不安から、一時6.7%台を付け、ユーロ導入後の最高水準を更新し、ベルルスコーニ首相が辞任に追い込まれた。そこに、清算機関による取引にかかる証拠金引き上げが加わったことも利回り上昇を加速させた。

 11月3日に開幕したG20首脳会議を攪乱した、ユーロ圏による支援策の是非に関するギリシャの国民投票をめぐる騒ぎは、結局パパンドレウ首相の辞任と引き換えの大連立内閣成立というかたちで収束した。同国への支援の前提となる緊縮財政策の承認も確実となり、80億ユーロの第1次支援の第6次融資も実行される見通しがついた。これでギリシャについてはひとまず債務不履行の懸念は去ったのだが、市場は次なる標的としてイタリアに狙いを定めた。

 なぜ、イタリアがここまで追い込まれたのか。

 右グラフに見るように、8月半ばまではスペイン国債とイタリア国債の利回りはほぼ軌を一にしていた。その後、イタリア国債の利回りが上回っていく。ユーロ圏では、政府債務の対GDP比率が2010年末で118.4%(スペインは61.0%)とギリシャに次いで高いことで、市場に敬遠され始めたのである。

金融機関のイタリア国債売りが
利回り上昇に拍車

 ここに、金融システム不安解消のため、自己資本比率を上げるよう圧力をかけられた金融機関によるイタリア国債はずしの動きが拍車をかける。