『家、ついて行ってイイですか?』の企画書、全8枚
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……という感じです。
かなり、現在の形に近いものになっています。
ここから、ロケをしながら、本書第1章で紹介している「即興のドキュメンタリー」として演出方法を定めていき、第2章と第3章で描いたような「ストーリー作りのフォーマット」を試行錯誤しながら決めていくことになり、現在の形になります。
「すっぴんの人妻が見たい」という自分の欲望を、会社や、あるいは社会が求めるものとすりあわせながら、企画に昇華していく過程。それこそ狂ったように情熱を傾けられる、「自分がやりたい企画作り」であり、「欲望肯定力」なのです。
こうして作られた企画こそ、作り手の欲望に裏打ちされた「深さ」が生まれる、「最高の企画」なのではないかと思います。
この過程を図説すると、こういうことになります。
自分のやりたいこと「A」が、どうしたら消費者のニーズ「C」に合致するか考える。その上で、それをどうしたら会社の強み「B」を生かしたものにできるかを考える。これが、組織の中で狂った情熱を傾けられる「最高の企画」作りだと思います。
A= 「自分のやりたいこと」だけでは、消費者を想定したエンターテインメントになりません。それは自己満足であり、芸術にすぎません。
C= 「ニーズ」だけを見た企画では、個性がなく何のおもしろみもない企画になってしまいます。
B= 「会社の強み」だけでは、世間のニーズからズレた、内輪だけで満足する寒い企画になってしまいます。
BとCを満たしていれば、それは番組(=製品)としては成立します。しかし、より人に「深く」ささるコンテンツは、そこにAが乗っかった形。それが最高の企画だと思います。
そしてこのAを企画で打ち出すコツは2つあります。
(1)「元の欲望→昇華させた欲望」という生成過程を経ること
(2)しかし、昇華しすぎないこと
元のままの欲望だと、あまりに生々しかったり、受け入れてもらえる層が少ない。消費者のある程度の範囲が受け入れられるものに昇華させる必要があるのです。
たとえば、「人妻見たい」だと、そもそも女性の一部は興味を持てません。でも、その「欲望」をやや抽象化させて、その中の大きな部分であった「人のプライベート覗き見したい」なら、より大きな層に興味を持ってもらえます。
この昇華された「欲望」は、自分が情熱を傾けるガソリンとしてだけでなく、視聴者のニーズの源にもなります。
これが、共通の興味を持ったインナーサークルだけでなく、より大きな範囲の人々に興味を持ってもらうコツです。
テレビならマスに向けて番組を作るということ。商品のPRなら、そもそもその商品に興味があるという既存の顧客の外に、見てもらうということです。
ここまでを整理すると、
A=人のプライベートを覗き見したい
C=
不動産というジャンル、さらにA(昇華された欲望)に対する共感
それでは、Bの「会社の強み」は何かということですが、テレ東の場合ほとんどありません。だからこそ、本書の第1章で述べているように、「弱みを転じて強みにしていく」しかないのです。「全部ひとり力」で身につけたロケ技術や、「バランス崩壊力」による「見たことない世界観を作る」という技術です。
これで、だいたい企画作りの指針は固まります。
しかし、Aの「欲望」に関してもう一つ大切なのが(2)。
「深く」ささってほしいなら、昇華させすぎてはいけないんです。
欲望を昇華させすぎると、ツルツルでなんのおもしろみもない、つまらないものになってしまいます。
だから、「あ、ちょっとヤバいな」と思うところくらいで止めておくのがコツです。
・深夜の人妻見たい (ヤバすぎ) =下
・人の生活覗き見したい (ちょっとヤバい) =中
・ライフスタイルを知りたい (聖人君子) =上
どうでしょう。
ライフスタイルは知りたくても、ちょっと企画がツルツルすぎて心がザワつきません。この欲望は、確かに視聴者にもあると思います。そして、より「広く」なったとは思います。
しかし、この「ライフスタイルを知りたい」欲望が突き刺さる「深さ」という意味でいうと、「人の生活を覗き見る」という少し生の「ヤバさ」を残したほうが、人の心に深いインパクトを残します。
ステーキでいうとミディアムレアでしょうか。肉を完全なレアで食べたら人間は腹を壊します。でも、ウェルダンすぎても本来の肉の風味を損ないます。
欲望の程よい、ミディアムレア。これが「深く」ささる企画だと思います。
ここまでが、先ほど述べた「欲望」の「超・中・下」でいったら、「下」=「人妻みたい」、と「中」=「プライベート覗き見したい」です。
そして、ここからは、(1)と(2)を行ったあとの、Aに関しての最後の作業。
「超」の欲望を加えるということです。この「超」は、今回の企画の中での欲望の下世話度である「上・中・下」を超越した欲望のこと。
(1)「元の欲望→昇華させた欲望」という生成過程を経る
(2)しかし、昇華しすぎない
(3)仕事(=コンテンツ)を通じて実現したい価値
この⑶を、最後のスパイスとしてブチこむということです。