さらに、それ以上下がってくると「売った方がいいのでは」という不安心理が出てくるが、ここで現状維持バイアスが登場する。投資家の心の中には「これ以上下がるのは嫌だから、売った方がいいのかもしれない。でも、既にかなり下がっている。もし今が底値で、売ってしまった後にすぐ上がったらどうしよう!」という気持ちが生まれてくるのだ。

 まさに、現状を変える(売却する)ことによって、状況がもっと悪くなる(売った途端に上がってしまう)のではないかという現状維持バイアスが働くのだ。

保険を解約した途端に
何か起きたらと考える

 同じようなことは保険でも起こり得る。家計において保険の見直しをおこない、必要な保険はいいが、無駄な保険は解約した方がいいということもしばしば言われることだ。ところがFPに相談してそのような指摘を受けても、実際に解約する人はそれほど多くはないようだ。これも現状維持バイアスといえるのだろうか。

 面白い発言がある。これは、ライフネット生命取締役会長の岩瀬大輔氏が書いた「がん保険のカラクリ」という本の中に出てくる、次の一節である。

「私たちが販売しているのは金銭的に医療費を補完するものにすぎません。しかし私が飛行機に乗る際に保険を買うのは、経済的損失から身を守るためではありません。もし買わないと飛行機が落ちてしまうような気がするから買うのです。これが、がん保険が解約されずにいる理由の1つだと思います。彼らはがん保険を買い、契約を続けてきた。ここで解約してしまうとがんにかかってしまうのでないか、そんなふうに考えていると思うのです」