「論理に裏打ちされた戦略があってこそ、成功にたどりつける」――これがかつてのビジネスの常識だった。しかし「他者モードの戦略」は、いたるところで機能不全を起こしつつある。その背後で、いま、マーケットに強烈なインパクトを与えているのは、「根拠のない妄想・直感」を見事に手なずけた人たちだ。
そんななか、最新刊『直感と論理をつなぐ思考法――VISION DRIVEN』を著した佐宗邦威氏は、いま何を考えているのか? P&G、ソニーで活躍し、米国デザインスクールで学んだ最注目の「戦略デザイナー」が語る「感性ベースの思考法」の決定版!!

「実現しようがない目標」はナンセンスなのか?

根拠なき大風呂敷を嫌う
「前年比至上主義」―イシューとビジョン

「データやロジックに基づいて、攻略すべきマーケットを事前に絞り込み、そこに資本を集中投下していく」――そんな旧来の考え方では、なかなかビジネスがうまくいかなくなってきている。

そしてその背後では、「根拠の見えない直感」や「得体の知れない妄想」を見事に手なずけた人・企業たちが、マーケットに強烈なインパクトを与え、周囲からの尊敬を集めている。

彼らは、途方もない「妄想」をまず提示し、それを駆動力としながら、ヒト・モノ・カネを呼び込んで世の中を動かしている。このパラダイムシフトの牽引役は、シリコンバレーなどで活躍するイノベーターたちだろう。

しかし、そもそも目標を「実現できないほど大きなもの」にする必要はあるのだろうか?

現在と未来との「ギャップ」をつくることが目的なら、そこまで過度な目標でなくてもいいように思える。

今回はこの点について考えてみたいと思う。