転機となったのは16年だ。それまで生茶は、急須で入れた緑茶の味を再現する競合製品の中で唯一、淡泊で清涼飲料的な味を維持してきた。だが、16年のリニューアルで大きく方針転換し「急須のお茶の味わいを大事にしながら、微粉砕茶葉を入れるなどして、進化した緑茶文化を提案した」(伊原綾乃・キリンビバレッジマーケティング部主任)。パッケージも高級瓶のようなデザインに切り替えた。

 飲料総研の調査によると、リニューアルにより16年の販売ケース数は前年比33%も増加。その後も17年は5%、18年は7%と市場全体の成長率を大きく上回る勢いで伸び続けている。

 一方、伊右衛門は特定保健用食品(トクホ)「特茶」の大失速により、18年はブランド全体で同5%ものマイナスとなった。挽回を期し「最高品質だけではなく顧客に寄り添うブランドイメージを新たに打ち出す」と多田誠司・サントリー食品インターナショナルブランド開発事業部課長は言う。

 宮沢りえ、本木雅弘が演じる“伊右衛門夫妻”の元をザ・ドリフターズのメンバーが訪れ、頭上にタライが落ちるというドリフコント風のものや、松坂大輔に本木が「妖怪か」と呼び掛けるものなど、由緒正しい京都のお茶というこれまでのスタンスとは大きく異なる新テレビCMは「腰を抜かした」(飲料メーカー関係者)と業界をざわめかせた。

 サントリーが起こすざわめきはこれだけではない。4月には本格的なお茶の味わいと違う形でごくごく飲める茶系飲料として、なんと「天然水」ブランドから“お茶”が発売されることが本誌の取材で明らかになった。

「液色も緑で、水と茶とどちらの棚に陳列すべきか迷っている」(別の流通関係者)と販売現場では戸惑いがあるものの、晴れて18年に日本で最も売れた飲料ブランドの座を獲得した天然水が緑茶市場にも触手を伸ばしてきた格好だ。