人間本来の学習法を
もっともっと突き詰める
経営コンサルタントだって、決して安泰とは言えない。
仮に現代日本に1万人の経営コンサルタントがいるとしたら、AIが進んでも生き残れるのは、トップ100人くらいであっても何ら不思議ではない。
その他大勢は、AIに職を追われても文句は言えない。
物価、金利、為替、原油価格、政治情勢などで、経営環境は刻々と変わっている。
それをAIがすべて総合的に判断できるようになったら、その他大勢は太刀打ちできない。
生き残れるのは、経営環境を集約して最終的に「だから何?(So what?)」と結論づけて、責任を取れる立場のコンサルタントたちである。
AIは結論を出せても、責任は取れないからだ。
2013年、イギリスのオックスフォード大学の研究者たちは、近い将来9割の仕事がAIと機械に置き換えられると推測した。
野村総合研究所は2015年、10~20年後に、いまある仕事の49%がAIやロボットなどで代替可能になると予測している。
研究者のこうした悲観的な推測が、当たるかどうかはわからない。
囲碁や将棋のようにルール化されたボードゲームとビジネスの世界は違う。
人間らしさが求められる領域では、人間がAIに駆逐されることはない。
そういう楽観論もある。
悲観論と楽観論、どちらが正しいかは、正直なところ私にも判別しかねる。
しかし、少なくとも若い世代のビジネスパーソンにおいては、AI時代に生き残るための知的武装が求められるという事実は揺るがない。
AIと戦う必要はない。共存共栄するために自己研鑽を怠らなければいい。
そこで大きな武器になってくれるのが、他ならぬ読書なのである。
なぜなら、読書はAIが得意とするディープラーニングそのものだからだ。
ディープラーニングとは、AIの急速な進展を支えている根幹的技術の1つだ。
囲碁用のAIがトップ棋士に勝てたのは、過去に人間同士が戦った棋譜を読み込んで、自己対局を超高速で繰り返したからである。
プロ棋士の対局数は年間60局程度とされているのに対して、AIは食事もせず、昼夜を問わず自己対局を続ける。
『アルファ碁』の、進化版である『アルファ碁ゼロ』は、人間の棋譜を一切入力せず、1手0・4秒というスピードで自己対局のみを重ねた挙げ句、3日間で490万回の自己対局を行って強くなり、アルファ碁に100戦100勝するまでに成長したそうだ。
プロ棋士が現役で活躍できるのが30年間とすると、総対局数は1800回にすぎない。
その対局数の違いが、強さの違いに、如実に反映しているのだ。
そう聞くと、AIにはとても敵わないと諦めてしまいそうになる。
しかし、それは早計だ。
AIの土台を支えているディープラーニングは、人間の脳を作る神経細胞のネットワークを模したシステムで、人間の学習をシミュレーションしている。
AIと共存するためには、私たちが人間本来の学習法をもっともっと突き詰めるべきであり、そのために欠かせないのが読書なのである。
【佐藤優氏も推奨!】
◎『週刊現代』連載「名著、再び」で大々的に紹介!
「教養」とは何かを知ることが
ビジネス成功の秘訣になる。
【著者からのメッセージ】
人生には大切なものが2つある。
1つは「友人」である。
趣味・嗜好が合い、何事も胸襟を開いて忌憚なく語り合える友人は、人生を豊かにしてくれる宝物だ。私にとっては財務相などを務めた故・与謝野馨さん、音楽家の三枝成章さんがそうであり、ヒロセ電気の社長だった故・酒井秀樹さんがそうだった。
利害損得を考えないで付き合える友人が何人いるか。
それは、その人間の懐の深さと器の大きさを反映している。
ネット社会には数々の問題点が指摘されているが、一方で共通の趣味を持つ人を見つけやすくなったのは、見逃せないメリットだ。
もう1つ大切なのは、「学習歴」である。
学歴という言葉があるが、この「学」と「歴」の間に「習」を入れると、「学習歴」という言葉になる。
私は学歴を信じていない。
それは、次のような経験があるからだ。
私が創業したドリームインキュベータでは、毎年数人の新卒採用枠に数千人ものエントリーがある。
いまは現場を退いているが、かつては私も入社希望者に面接をしていた時期があった。
面接では、世間的には名の通った名門高校から名門大学に進み、学歴は申し分なくても、「大学4年間で一体何を学んできたのか?」と問いたくなるような魅力のない人間に大勢出会ってきた。
東大卒、京大卒、ハーバード大卒といった最終学歴がどんなに立派でも、学んで習う習慣を持たない者は伸びない、魅力がない。
本来は「学歴≒学習歴」なのだ。
しかし、有名大学に入るだけで満足してしまい、学びを得ないままで卒業した人間は学習歴に乏しい。
感性も知性も人生でもっともみずみずしく、人間としてもっとも成長できる時期に、自分に何も投資しないのは極めて愚かな選択である。
学歴の代わりに私が信じているものこそ、何を学んできたかという学習歴だ。
たとえ学歴がないとしても、学習歴が豊かな人は人格的にも優れているし、学んで習うという習慣を忘れないから、ビジネスパーソンとしてだけでなく、1人の人間として成長し続ける。
その学習歴を作ってくれる手段が、読書なのである。
さきほど触れた酒井さんは、多極コネクターで業績を上げて、ヒロセ電気を売上高経常利益率が3割という超優良企業に育て上げた中興の祖である。
彼は東京都立港工業高校の出身で、大学は出ていない。
エンジニアとして極めて優秀だった。
それに甘んじることなく、読書で経営感覚を徹底的に磨いた。
学歴を学習歴が凌駕した好例である。
自分には自慢できる学歴がないと思っている人も多いだろう。
しかし、そんなことを思っている暇があったら、寸暇を惜しみ、せっせと読書に励むべきだ。
読書で学習歴を積み上げられたら、学歴は気にしなくていい。
学歴は一流、超一流へと近づく方法ではない。
読書で教養を磨き、洞察力を高めるのが超一流への近道なのである。
若いときから読書習慣をつけるのが理想だが、読書に年齢の壁はない。
何歳から読書に目覚めても遅いという話にはならない。
大学を卒業してビジネスパーソンになってから、もう一度大学に入り直して学歴を更新するという方法もある。
日本では大学は学生だけが行くところだが、欧米では社会人が大学で学び直して、再び社会に戻るケースは珍しくない。
社会人が就労に活かすために学び直す「リカレント教育」が日本でもようやく注目されるようになってきた。
しかし、まだまだ学び直したい社会人を受け入れる土壌が整っているとは言い難い。
ならば、学び直して学歴を更新するのではなく、読書で学習歴と高めるという選択肢を選ぶほうが賢明である。
心から共感できる友人がいて、その友人と読書と介した学習歴を高め合う関係を築けるのが理想である。
私にとって三枝成彰さんは、いまでもそういう得難い存在だ。
読者の皆さんにも、これから生涯に渡って読書によって学習歴を高め、豊かな人生を歩んでもらいたい。
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<目次>
第1章 二流から一流へ成長する読書術
第2章 AI時代を生き抜くための読書術
第3章 ほしいと思われる人材になる読書術
第4章 読書力を引き上げるコツ
第5章 読書こそが私という人間を作ってくれた