広域渋谷圏で東急不動産が手掛ける原宿「神六」再開発(左上から時計回りで)取り壊される予定の建物。テレサ・テンも住人だったオリンピアアネックス、地下部分は残す予定の東京メトロ明治神宮前変電所、渋谷区が持つ防災倉庫、屋上で養蜂事業を行っているコロンパン原宿本店、敷地は都有だった渋谷区立神宮前隠田区民会館

珍しい再開発会社施工

 「神宮前六丁目地区」では、すでに2015年には再開発準備組合が設立・認可を受けている。この頃は、16年度に都市計画決定を受けて17年度に権利変換を行い、18年度に着工、20年度竣工という見通しだった。しかし、合意形成に時間をかけた結果、ちょうど2年ずつ遅れる形で19年度に権利変更を実行予定となっている。

 総事業費は当初見込みより2割強膨らんで約180億円に、一方で延床面積は約2万2100平方メートルからコンパクト化を図り約2万0550平方メートルとなっている。明治通り側の高さ制限は60mだが、現状の計画では約49.5m(10階建て)と控えめだ。工事代金が高騰していることに加えて、再開発の対象面積が0.3ヘクタールと狭く、容積率を使い切ってしまったことも影響している。

 都市再開発法では再開発の事業主体によって、「組合」「個人」「再開発会社」「地方公共団体」という4つの施行手法が規定されている。5人以上の地権者が集まり再開発組合を組織する「組合施行」が一般的な手法だ。「個人施行」の例としては、「HARUMI FLAG」の名前で分譲が始まる東京五輪選手村の「晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業」があり、この場合は土地を保有している東京都が単独で事業主体となっている。

 その点、「神宮前六丁目地区」では「再開発会社施行」という珍しい形態を取っている。地権者でもある東急不動産と東京地下鉄(東京メトロ)が共同で「神六再開発」という株式会社に出資して、事業主体となっている。再開発会社は地権者が議決権の過半数を有することで、全員参加の組合施行と比べて、手間が省ける点がメリットとされる。

 再開発エリア内の建物はいずれも築50年前後と老朽化している。加えて、神宮前交差点は歩道を区道第630号という細い道路が突っ切る変形五差路で、事故の危険性がついてまわったことも、再開発を進める動機になっていた。今回、この区道は閉鎖され、代わりに4m幅の歩道が敷地内に設けられ、南西に接する道路は6mに拡幅が予定されている。

 この地区の地権者は8者である。中心となる建物のオリンピアアネックスを13年に取得した東急不動産、変電所を持つ東京メトロ、洋菓子の老舗コロンバン、17年末に閉館した渋谷区立神宮前隠田区民会館の土地を所有する東京都と隣接する防災倉庫と廃止する区道を持つ渋谷区、そして明治通りの拡幅により島のようになっている「6-30街区」の地権者である。

 再開発ビルの中身は19年度中に行われる権利変換の話し合いの中で決まって行く。都は補償金を得て転出する予定で、渋谷区は区道を廃止した分も含め保留床を取得して何らかの公共施設を設けることになりそうだ。その他、特定事業参加者は今後公募されるが、商業用途を主体に東急不動産が床を大きく持つことになる。