「排除ベンチに座っていただけで撲殺された女性ホームレス…」現場に残されていたものが示す悲痛なメッセージとは写真はイメージです Photo:PIXTA

路上生活者が横になれないよう仕切りを設けた、いわゆる「排除ベンチ」。そこに座っていたホームレスの女性が暴行を受け、命を落とした。現場に残されていたのは、食品のゴミと電源の切れた携帯電話。報道だけでは見えてこない、彼女の日常の断片がそこにはあった。遺留品が語る、女性の声とは何か。※本稿は、奥田知志『わたしがいる あなたがいる なんとかなる「希望のまち」のつくりかた』(西日本新聞社)の一部を抜粋・編集したものです。

ベンチに座っていただけの
ホームレスの命が奪われた

 2020年11月16日午前4時ごろ、東京都渋谷区のバス停のベンチに座っていたところを襲われた。田中さん(仮名)は路上生活者だった。救急搬送されたが、死亡が確認された。

 防犯カメラの映像によると、犯人はベンチに座っていた彼女の頭を袋で殴り逃走。言葉を交わした様子はなく、いきなり殴りかかったとみられる。

 同月21日、警視庁は母親に付き添われて現場近くの交番に出頭した46歳男性を逮捕した。

「痛い思いをさせれば、あの場所からいなくなると思い殴った」「まさか死んでしまうとは思わなかった」などと供述したという。

 凶器となった袋に「ペットボトルなどを入れていた」「石を入れた」などと話し、付き添いの母親は「あんな大事になるとは思わなかったと本人が言っていた」と証言したようだ。

 田中さんは薄れていく意識の中で何を考えただろうか。そこにあったのは、無念、苦しみ、痛み、怒り、悲しみ……。あるいは、「これで楽になれる」だったろうか。