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「後発」だが余裕の表情 筆者撮影

 4月9日、KDDIはバーコードやQRコードを使った決済サービス「au PAY」を開始する。

 市場にはすでに「なんちゃらPay」が乱立し、KDDIは一見、後発に見える。しかし実際のところ、KDDIにはキャッシュレス事業者としては「業界のパイオニア」という自負が伺える。

 実はKDDIは、すでに2014年に「au WALLET プリペイドカード」「au WALLET クレジットカード」といった物理カードを発行。その後、Apple Payで非接触決済にも対応した。

 すでに携帯電話料金の支払いや、端末購入時のキャッシュバックのポイントを現金価値に換えて利用できる仕組みを整備済みなのだ。

 このとき、ポイントなどを管理するためのアプリを配布している。今回スタートするau PAYは、このau WALLETアプリをバージョンアップさせることで誰でも利用できるようになる。

 「au WALLETプリペイドカードは誰でも持てるカードとして、結果的に2000万枚配布した。この5年で多くのユーザーにバーチャルの口座を持ってもらえたことが大きな成果と言える」(KDDI・ライフデザイン事業本部新規ビジネス推進本部、中井武志副部長)

●毎月付与のポイントを利用できる

 ユーザーにQRコード決済サービスを使ってもらうため新たにアプリをダウンロードしてもらうというのは、それだけで高いハードルになってしまう。LINE Payやメルペイが既存のアプリの新機能として決済サービスを追加したように、au PAYも既存のau WALLETアプリの新機能として提供することで、利用のハードルを下げるようにしたわけだ。

 また「なんちゃらPay」が乱立する中、au PAYの強みとなるのが「通信キャリアが提供する決済サービス」という点だ。

 携帯電話のユーザーは毎月キャリアに通信料金を支払っている。その見返りとしてキャリアはユーザーにポイントを付与している。

 KDDIはすべてのユーザーが保有するポイントが1000億円を超える残高になっているという。しかも1000ポイント以上のユーザーは1400万人以上、1万ポイント以上でも約100万人規模になるとのことだ。

 毎月継続的にポイントが付与され、そのポイントをすぐに現金代わりにQRコード決済で利用できるというのはキャリアのサービスならではといえる。

 もうひとつau PAYのキャリアならではの機能が、今年夏に提供予定の「リアルタイムチャージ機能」だ。

●すぐに換えやすいサービスを

 au PAYでの支払い時、残高が不足していたときでも、その場で不足分をリアルタイムにチャージしてくれ、ストレスなく支払いを完了できるという仕組みだ。不足分は翌月の携帯電話料金と合算して支払える。

 「まさにキャリアでしか提供できない仕組みではないか。いま使った分が翌月の請求書に載ってくる。au PAYの残高がゼロでも、限度額内であれば後払いとして利用できる」(中井氏)。

 現在、QRコード決済を活用している多くの人が「お得なキャンペーン目当て」だったりする。最高20%のキャッシュバックを目当てに魅力的なキャンペーンをしているところを渡り歩いて使っている、という人も多いだろう。実際KDDIでも、チャージ額を10%増額したり、三太郎の日にはポイントを20%増量するなどのキャンペーンを実施する予定だ。

 おそらく、なんちゃらPay事業者たちによる「高額キャンペーン合戦」は今年10月の消費増税まで続くものと思われる。しかし未来永劫、高額キャンペーンを続けていくのは不可能なわけで、いずれどの事業者も大盤振る舞いのキャンペーンは収束させていくとみられる。ではKDDIとしては、将来的にユーザーに継続してもらうためにどんな手を打つつもりなのか。

 中井氏は「継続して使ってもらう仕組みをどう構築するか、事業者側としては重要な課題と捉えている。我々としては(auでんきや光回線、オンラインショッピングなど)いろんなものでポイントがたまっていくが、さらに、すぐに現金価値として換えてもらえるようなサービスを出していきたい」と語る。

●店舗に説明しやすい

 ユーザーが決済サービスを利用する際、キャンペーン以外にも気になるのが「どこで使えるか」という点だ。どんなに魅力的なキャンペーンがあっても、使える店舗がなければ意味がない。

 その点、auの決済サービスは物理カードを提供していることもあり、クレジットカードが使える場所で決済できる。また、Apple Payにも対応しているため、QUICPayが使える場所でも支払い可能だ。

 QRコード決済に関しては、楽天ペイ、メルペイ、さらには食べログと連携し、使える店舗を拡大中だ。

 店舗側からすれば、数多くある「なんちゃらPay」のうち、au PAYに対応するメリットはどんなところにあるのだろうか。

 「すでに(auの決済サービスは物理カードやApple Payで)月間で何百万人もが使っている。現在進行系で利用しているユーザーが多数おり、今回のQRコード決済は、その出口が追加されるイメージになる。キャンペーンのような賑やかしもあるが、それよりも、これまでの実勢を示したほうが、店舗側にはわかりやすいのではないか」(中井氏)

 つまり、店舗側からすれば、au PAYに対応することで「すでに決済サービスを使っているauユーザーが来店する」というメリットが期待できる。しかも「これから」ではなく「すでに使っているユーザーが月に数百万人いる」という実績がものを言うというわけだ。

 まさにKDDIはQRコード決済では「後発」であるが、キャッシュレスの世界では、着実に他社よりも先を走っていると言えそうだ。


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筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。