信用金庫業界が、自己資本を積み増すための新しい制度の創設を検討していることがわかった。
これまでも、不良債権の増加や本業の不振などで自己資本が毀損、自己資本比率が6%を割り込んだ信金に対し、上部組織の信金中央金庫が資本を注入できる「信用金庫経営力強化制度」があった。
関係者によれば、それを今回は全国の信金で構成する全国信用金庫協会が、6%を上回る健全な信金に対しても要請に応じて資本を提供できるよう新たな仕組みをつくる方針を固め、現在、そのための機構を設立する方向で検討しているという。
背景には、世界的な金融危機に端を発し、金融機関の自己資本比率規制が強化されようとしていることがある。今は国際業務を行なっている金融機関が対象となっていて信金は関係ないが、時価会計など国際的な規制が徐々に規模が小さな金融機関にも適用されるに至った過去があるからだ。
だが信金は、業態の特性から自己資本の強化が容易ではない。もともと営業基盤が小さく、その地域内に居住し会員となった個人や企業の出資によって成り立っている金融機関だからだ。
収益から内部留保を積み、資本の充実を図ろうにも、地元には有望な貸出先が乏しいばかりか、稼げる地域に進出することさえできず、多額の利益を出すのは難しい。
おまけに、現在のような金融環境では、出資してくれる会員も限られ、たとえ出してくれたとしても、出資者へ支払う配当負担に耐えられないといった事情もある。
しかしそもそも、当の信金関係者からは、「信金に国際的な規制が適用されることがあるのか」との声がある。2012年からスタートするとされている規制だが、10年を超える移行期間が設けられるとの情報もあり、当初よりかなりトーンダウンしているからだ。
そうしたなか、過剰ともいえる新たな資本強化制度が必要なのか。さらなる議論が必要なのではないだろうか。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)